弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年11月17日

栄家の血脈

著者:王 曙光、出版社:東洋経済新報社
 中国の国家副主席にまでのぼりつめた栄毅仁の一生をたどった本です。今も、栄家は中国大陸と香港で栄華を極めていますが、その繁栄の源(みなもと)を明らかにした440頁もの大作です。
 中国最大の民族系実業家として繁栄し続ける栄家五世代が記録されています。それは、清王朝の末期から、辛亥革命、中華民国期、抗日戦争期、国共内戦・中華人民共和国成立期、新中国建設期、文化大革命期、改革開放期という、激動する中国近現代史の七つの時代と重なっています。
 栄毅仁は国共内戦期に大陸に残ります。新中国建設期に毛沢東に出会い、躍進したものの、文化大革命のときには地獄に落とされてしまいます。そして、改革開放によって、?小平によって支えられ、再び大きく躍進するのです。
 今、栄家を継ぐ栄智健は香港にいながら、中国政府からも守られて自由自在に活動することができる。その富の源泉は、中国政府のトップ情報をいち早く入手できることにあるのです。
 その栄智健は、若いころ、文化大革命のさなかに栄家一族の人間として大きな迫害を受けました。辺地の水力発電所の技師として5年ほど勤務した経験もあります。ところが、父の栄毅仁が?小平の引きたてによって出世すると、息子である智健もたちまち出世していきます。もちろん、才能あってのことではありましょうが・・・。
 この本を読むと、中国ははたして社会主義(共産主義)の国なのか、改めて疑問に思えてなりません。官僚統制の強い国だということは良く分かるのですが・・・。また、毛沢東の文化大革命の負の遺産を今なお中国が引きずっていることも痛感します。なにしろ、日本でいう団塊世代、つまり、私の世代が、中国ではほとんど活躍していないというのです。紅衛兵として華々しく活動していたので、かえって失脚してしまったということのようです。地道に勉強しないと、結局、社会から受けいれられないということのようです。
 それにしても、この栄家という存在は、日本の財閥をはるかに越えた力をもっているようですね。本当に、そんなことでいいのでしょうか・・・。

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