弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2006年11月 9日
東アジアのなかの日本古代史
著者:田村圓澄、出版社:吉川弘文館
女王卑弥呼の政権を支えたのは、女王卑弥呼が祭る「神」ではなく、「異国の皇帝」であった。魏の皇帝の支持と援護を失うならば、卑弥呼は、倭の女王であることはできなかった。女王卑弥呼は巫女(みこ)であった。卑弥呼は神権政治を行って以降、その姿を見る人は少なくなっていた。
倭は尊卑の差序によって区分される、身分社会であった。大人ー下戸ー奴婢の3階層に大別できる。3世紀の倭の「クニ」は、邪馬台国の女王卑弥呼の支配下にあったが、しかし、女王卑弥呼が支配する倭は、倭の一部だった。
実在が確認できる最古の倭王と考えられる応神大王(天皇)はいうまでもなく、架空の存在とみられる第一代の神武大王にはじまり、以後のすべての倭王は自己の宮をもち、その宮に住んでいる。この一大王一宮の制度・慣行は、古代中国の各皇帝、朝鮮半島の各王朝においては見られない。倭王のみに固有の制度・慣行だった。同一の宮が、2人またはそれ以上の倭王によって住居として使用されていた例はない。「古事記」では、33代の推古大王まで、「日本書紀」では39代の天武天皇まで、ひとりの例外もなく一倭王一宮の慣行を厳守している。それを打ち破ったのは、天武天皇の飛鳥浄御原宮(あすかきよみはらのみや)の出現である。倭王の宮は、もともとは神を祭る場であった。そうだったんですか・・・。認識を新たにしました。
倭の大王の即位は、群巨の衆議による。そうだったのですか・・・。現大王が次の大王を指名して自動的に決まるということではなかったのですね。
太宰府設置以前の筑紫には、太宰府と同類の役所は存在しなかった。太宰府は、来日する新羅使を上陸第一歩の筑紫の地において、「蕃国」の客としての賽礼で送迎する官衙(かんが)であり、701年(大宝元年)に制定された大宝律令によって設置された。
太宰府が設置されるころの日本の情勢もよく分かる本です。
北部九州の山に、開創者が海の彼方の人であるとする山がある。英彦山は魏の善正、雷山(前原市と佐賀郡との境にある)は天竺の清賀、背振山は天竺の徳善大王の十五王子とする。これは、渡来系の集団がこの山に定住していたからではないか。うむむ、そうだったのでしょうか。でも、天竺って、インドのことじゃなかったかしらん・・・。
蘇我馬子は崇峻(すしゅん)大王を公開の場で殺害したが、誰もとがめることはなく、かえって当然視された。非は崇峻大王にあると当時の人々は考えていた。
当時の倭王には「倭王の軍」はなかった。倭王が指揮・統率する「国軍」は存在しなかった。ムスビノ神の祭祀を本務とする倭王が、軍事力とかかわりをもたなかったのは、当然といえる。
隋の煬帝が無礼だと考えたのは「日出る処」と「日没する処」との対比の箇所ではない。問題は「天子」にあった。天子はただ一人であり、隋の皇帝である煬帝であった。煬帝意外に天子はありえない。天命にそむく倭王の大王は許せなかった。
聖徳太子の「太子」は倭の制度にもとづくのではなく、仏教経典に根拠をもつ名称である。「天皇」制の成立以前において「太子」が存在する理由はない。「摂政」を厩戸王の史実とすることにはためらいがある。聖徳太子は実在していたのか、著者も疑問を投げかけているようです。
たまには、日本の古代史をふりかえってみるのも大切だと思いました。だって、いま、女性天皇を認めるかどうか大騒ぎしているわけですからね。私は天皇制なんて早いとこ廃止したほうが、みんなのためだと思います。だって、雅子さんがなんであんなに毎週のように週刊誌でバッシングされなくちゃいけないんですか。可哀想じゃないですか。あれも、改憲勢力が、女性天皇なんか認めたら日本はとんでもないことになるんだと警告するために叩いているのだそうです。支配層、実は権力を握った一部の人間の道具にすぎない天皇って、ホント、哀れなものなんですね。週刊誌の見出しを眺めるたびに、そう思います。天皇一家には基本的人権は保障されていないし、権力を握る連中には社会的常識も通用しないんですね。
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