弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年9月29日

巨大投資銀行(上)

著者:黒木 亮、出版社:ダイヤモンド社
 案件としては、1件あたり最低100万ドル(2億5000万円)は儲かるものを追ってほしい。細かいビジネスはモルガン・スペンサーのビジネスではない。
 小説のはじめのころに出てくる上司の言葉です。なんという世界でしょうか・・・。一人あたり年間純利益で100万ドル上げていれば、何とかクビがつながる。200万ドルだと安泰。ええーっ・・・。
 自分、そして秘書。2人のアナリストの給与、直接経費、間接経費など一切合切を含めると、年間コストは100万ドルかかる・・・。うーん、なんという金額でしょう、まったく想像を絶します。
 朝起きると、顔を洗い朝食をとりながら、今日一日、どんなことをして、どんな展開になるか、すべて、予想する。すると、全身にアドレナリンが流れ、だんだん興奮してくる。その興奮状態で会社に行って、仕事に取りかかる。これがインベストメント・バンクで生き残る道だ。うひゃー、という叫び声を、ついあげてしまいました。私も、朝のうちに今日一日のスケジュールを予想し、頭のうちに自分のとるべき言動を予習します。それでも、ここまでは・・・。
 これは、年収5000万円の世界です。とてつもない金額が一瞬のうちに世界中を駆けめぐり、そこで、丁々発止の取引をしている人々の話です。私は、とてもこんな生活をしたいとは思いません。神経がすり減ってしまうだけ。お金の本当のありがたみも、まったく分からなくなってしまうとしか思えません。そして、ちょっとでも勘の鈍った人間は、たちまちお払い箱になるのでしょう。それでも、やめたときに大金が手元に残っていればいいのでしょうが・・・。あぶく銭になって消えているのではありませんか。
 いえ、それより心配なのは、精神状態がまともであるかどうか、です。余計な心配だと言われるかもしれませんが、私にはそれが一番の心配です。
 スイスの金融機関が日本の富裕層をターゲットとした活動を展開しているそうです。ターゲットにする富裕層とは、資産2億円以上。しかし、実際に狙うのは10億円以上で、なかでも核になるのは50億円以上の層だといいます。信じられない金額です。日本でも超リッチ層がアメリカ並みに生まれているのですね。
 いったい、どれくらいリッチ層がいるのでしょうか。最近の新聞によると、純資産額が1兆円から5億円までの富裕層は81万世帯。これは、前年比33%増。5億円以上のスーパーリッチ層は5万2千世帯で、前年比21%増。5000万円から1億円までの準リッチ層は280万世帯いるといいます。やはり、日本もアメリカ並みの格差社会になってしまったようです。「美しい国」どころか、アメリカのように怖くて醜い国になりつつあります。小泉内閣の5年間で、日本はすっかり変わってしまいました。でも、私はめげずに人々の心が通いあう社会をめざしたいと思います。

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