弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年9月28日

フラガール

著者:白石まみ、出版社:メディアファクトリー
 ぜひ見ることをおすすめしたい映画です。炭鉱で首切りがすすむなか、炭鉱夫とその娘たちの働く場としてハワイアンセンターが計画され、見事に成功させた実話をもとにしています。
 炭鉱長屋の生活が再現されています。かつては見慣れた光景ですが、福岡県内でも今はどこにも残っていないのではないでしょうか。CGでボタ山と炭鉱長屋が再現されていますが、実に壮観です。そこには人々の泣き笑いがありました。わたしの両親も炭鉱で働く人々相手の小売酒屋を20年以上営んでいましたから、本当になつかしい光景です。
 この本は、映画の台本をもとにしたものですが、映画とは少し異なる部分もあります。
 東京から炭鉱娘たちにフラダンスを教える先生が招かれます。SDSのトップダンサーだった彼女は、まったく経験のない、ド素人の炭鉱娘を見て絶望してしまいます。
 やっぱりさ、あんたたちには一生無理だと思うよ。
 これに気の強い紀美子が反発します。一生無理だなんて決めつけねえでくんちぇ。たしかにド素人かもしんねえけど、やるしかねえ。炭鉱だって、いつダメになるか分かんねえし・・・。
 それで、先生は条件をつけます。私の言うことをすべて聞くこと。言われたとおりになんでもやる。いちいち質問しない。口答えも一切なし。あと、どんなに辛くても絶対に泣かない。これが守れるんだったら教えてもいいけど・・・。
 フラダンスを踊るフラガールの話です。実は、わたしも舞台の上でフラダンスを踊ったことがあるのです。ちゃんとした衣装をつけて踊りました。というのも、わたしの事務所にしばらく本職がフラダンス教師という女性(今も九州一円で活躍されている田上やよい先生です。その折は大変お世話になりました)がいたからです。そのときの写真をお見せできないのが残念です。
 フラダンスは奥が深い。フラの動きは実は手話である。フラは、もともと文字を持たないハワイの人々が、子孫に文化や伝統を伝えるために踊った神聖なもの。
 私は、で両手を上にあげ、円をつくり、あなたを、で波乗りの形をつくる。そして、愛しています、で両手をくるくると回し、右手をすべらせる。
 それまで私は、フラダンスのことをいわばエロチックな腰ふりダンスだとばかり思って馬鹿にしていました。実は文化だったんですね。
 先生は真剣になって生徒である炭鉱娘たちを教えはじめます。娘たちも必死になりはじめました。
 お客様は、あなたたちの笑顔とダンスを、お金を払って見にくるの。だから、常に最高の笑顔を心がける。それがプロよ。バカみたいに笑うの。どんなに辛いときだって、舞台の上では笑ってなきゃいけないの。それがプロなんだから・・・。
 炭鉱娘たちは開場前に宣伝のための巡業に出ます。でも、お客はフラダンスなんてストリップショーとしか思っていません。とうとう、紀美子たちフラガールは切れてお客とケンカしてしまいます。帰りのバスの中ではフラガールのなかで非難しあい、ケンカまで始まってしまいました。先生がブチ切れます。
 なにが一山一家なのよ。できないならできないなりに、助けあうとか励ましあうとか、そういう気持ちにならないの。炭鉱娘なんてこんなもんだ、と思われて悔しくないの。もう辞めちまいなさい。見てるこっちの方が恥ずかしいわ・・・。
 そこまで言われて、フラガールはしゅんとして気をとりなおします。
 昭和41年1月15日、いよいよハワイアンセンターのオープンです。入場料は大人 400円、子ども200円。キャッチフレーズは、1000円もってハワイへ行こうです。なんと、初日に1万人が押し寄せたといいます。
 初日のフラダンスはまさに圧巻です。蒼井優は実に見事に踊ります。フラガールたちの踊りも最高でした。汗が全身にほとばしり、見ているわたしまで手に汗をかいてしまったほどです。主演の松雪泰子がひとりで演じたタヒチアンダンスも息を呑む見事さでした。
 最近ちょっと疲れてるな。そんな思いをしている人には絶対おすすめの映画です。空気が入りますよ。

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