弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年9月26日

アイフル元社員の激白

著者:笠虎 崇、出版社:花伝社
 そもそも、浪費する人間を国家も企業も望んでいる。着実に貯金し、無駄遣いせず、物を大切にして、なかなか物を買わない、なんていう人間が増えたら、今の日本の経済システムではたちまち不景気になってしまう。ホントにそのとおりだと私も思います。浪費を前提として今の日本は成り立っています。
 借金してまで物を買わせようと、国家も企業もマスコミも必死になって、国民を借金漬けにしようとしている。そのことに気づかなければ、他人事だと思っている多重債務者に、あなたもなってしまうかもしれない。これも、まったくそのとおりです。多重債務に陥るのは、決して一部の不心得だけではありません。
 著者は、アイフルは狙い撃ちされたのだと主張しています。というのも、アイフルが銀行系列に入らずに独自路線をすすんでいるからだというのです。
 アコム、プロミスは銀行の軍門に下ってしまった。独自路線をいくアイフルは体制側・既得権益側にとっては、邪魔な出る杭なのだ。
 うむむ、そう言えるのですか。知りませんでした。そんな観点がある、なんて。
 金融庁は、国民無視の銀行を保護するための出先機関でしかない。まことに、そのとおりでしょう。サラ金の金利引き下げ問題で果たした負の役割を見たら、いよいよ明らかですよね。銀行とサラ金が一緒につくったサラ金CMがテレビでバンバン流されている。プロミスと三井住友銀行のアットローン、アコムと三菱東京UFJ銀行のDCキャッシュワンなど。ともかく、テレビも新聞・雑誌も、サラ金からの広告収入に大きく依存している。問題が起きれば批判キャンペーンを行い、そこで視聴率を稼いでもうける。そして、ほとぼりがさめたら、再び大量にサラ金CMを流して、またもうける。まことに、まことに、そのとおりです。テレビのサラ金CMこそ、諸悪の根源と言えるでしょう。あれが浪費をあおり、多くの国民を借金漬けにしてしまったのです。
 CM好感度白書によると、チワワで人気を集めたアイフルが、二年連続で一位になったそうです。借り入れをあおって多重債務者や自己破産者を増やしているのは、他でもない、テレビ局なのだ。そのとーり。
 お金にだらしのない人間は生活がだらしない。というより、生活がだらしないから、お金にもだらしなくなる。部屋が汚い債務者ほど返済が遅れる可能性が高い。きれいに整理整頓されている家は、返済もきちんとしてくれる可能性が高い。借金とは、生活習慣の問題。
 なるほど、まったく、そのとおりです。ですから、借金漬けから脱け出すのは容易ではありません。毎日の何気なく過ごしている生活を根本的に変えていく必要があるからです。
 サラ金は、借りようという人に借金のつかい道を執拗に訊く。それは、つかい道がしっかりしているかどうかで、その人の計画性と回収見込みが分かるからだ。これまた、なるほどですね。サラ金まみれの人がどうしてこんなに多いのか、どうしたらよいのか、について、元サラ金の有能な社員だった人の率直な指摘です。いくつかの異論はありましたが、同感できるところの多い本でした。

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