弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年8月30日

イラクと自衛隊ブログ

著者:岡本 宏,出版社:アメーバ・ブックス
 バクダッドの危険はテロに巻きこまれること,サマワの怖さは自分がテロの対象になっていること。
 イラクではタクシーに乗ったら助手席に座らなければならない。日本の感覚で後部座席に座ってはいけない。ひと目で外国人と分かってしまい,テロリストの恰好の餌食となる。
 イラク派遣の自衛隊員に支給される危険手当は1日3万円。3ヶ月いたら、それだけで300万円になる。すごい高給優遇です。しかも、一日一時間だけ働けばいいのです。新聞報道によると、イラクに派遣された陸上自衛隊員は3ヶ月交代で、2年半のあいだに合計5500人。各方面隊は600人ずつ派遣したが、本隊は500人で、業務支援隊が  1500人。この500人のうち、自衛隊宿営地の管理と警備に各200人。したがって復興活動にあたったのは、なんと600人のうちわずか100人のみ。施設部隊50人と衛生部隊50人。しかも、活動時間は当初こそ1日3時間だったのが、路上爆弾攻撃を受けた2005年6月からは、なんとなんと1日1時間のみ。いやあ、驚きました。こうまでして、小泉首相はイラクに自衛隊がいた実績をつくりあげたかったのです。といっても、正当性がまったくない戦場で生命を危険にさらしたくなんてありませんよね。
 大切なのはGNN。義理(G),人情(N)と浪花節(N)。これは万国共通。
 ABCが大切。当たり前のこと(A)を,ボーッとしないで(B),ちゃんとやる(C)。
 昼間は41度,夜は32度。この32度でも肌寒い。湿度がないから。
 イラクでは昼食がメインで,ご飯を食べるのは昼だけ。夜はパンだけで,軽めの食事となる。だから,夜レストランに行って,ご飯を注文しても出てこない。
 イラク人は,見た目から10引いた年齢が実年齢であることがほとんど。それだけ苦労していることなんでしょうね。
 サマワでは,すべての女性が家庭から出ることはない。
 この本は,中日新聞社の写真記者がイラクのサマワに派遣されたとき,ブログで日記を書いたものをまとめたものですから,臨場感があります。迫真のドキュメントとありますが,まさしく危険と隣りあわっせだということが伝わってきます。ただ,著者がイラクにいたのは2004年3月24日までです。サマワは,その後,ますます危険地帯になったような気がします。
 そんなイラクとサマワの実情が日本人にほとんど知らされていない現実があります。そのうえで小泉政権はタカをくくっているのです。許せません。そして、航空自衛隊のほうはイラク全土を飛んでアメリカ・イギリス軍の支援活動をしています。日本人の多くは、自衛隊はイラクから完全撤退していると思っているんじゃないですか。
 あつ、そうでした。もうひとつ、海上自衛隊がいました。こちらはアフガニスタンの復興支援ということでインド洋まで出かけているのですが、いつのまにかイラク侵略戦争をすすめているアメリカ軍の補給活動までしています。
 マスコミって、こんな実情を報道していませんよね。ホントに困ったことです。

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