弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年8月25日

あっと驚く動物の子育て

著者:長澤信城、出版社:講談社ブルーバックス新書
 巣から落ちたスズメの子を育てた観察記録が紹介されています。
 スズメは皿で水浴びをし、手にもったティッシュペーパーで体を拭いてもらうのが大好きになり、いつも催促するほどだった。食事で大好きなのは、ご飯に生卵の黄身をぬったもの。娘たちから口移しでもらっていた。
 遊びで一番好きだったのは、著者の妻の髪のなかにもぐりこんで、その中から顔を出したり、引っこめたり、ごそごそ髪のなかをはいずり回り、とんでもないところから顔を出してみんなを笑わせること。肩止まりも好きで、よく家族の肩巡りをした。
 丸三年を過ぎたころから、外に出てはスズメ友だちと遊んだ。帰ってくると、必ず肩に止まり、人の首をつつく。ただいまの挨拶だ。外泊することは一度もなかった。4年目の夏の終わりに死んだ。わが家にもスズメ一家がいます。スズメは人間と共存する動物なのです。ところが、家を出入りするときには、物音ひとつたてないように注意しているようです。家から出ると、やかましくさえずりあっているのですが・・・。
 エンペラーペンギンは、卵内のヒナはふ化する3〜4日前から音を聞く能力ができあがっていて、親の鳴き声を正確に記憶する。卵内のヒナも小さな声でピーピーと返事をする。その声を親も正確に記憶している。ふ化前の親子の鳴き交わしを卵内ピッピングという。鳥は巣を外敵に発見されないところにつくるので、親子確認は音に頼る。そのため聴覚器官がもっとも早く機能する。
 オットセイも同じ。メス親が海へ食事に出かけて戻ってくると、大きな声で呼びかける。何万頭も一緒にいる子どもたちは一斉に応答するが、メス親はその応答のなかから自分の子の鳴き声を探りあてて、その方向に向かう。最後は、鋭い嗅覚で自分の子を探りあてる。
 鳥もほ乳類と同じく、数を認識する。自分が三個しか卵をうんでいないのに、巣に四個の卵があると、おかしいと認識する。おかしいと思うと、その巣を捨てる。
 動物は繁殖の営みのなかで、必死になるときが二度ある。一度は、相手にプロポーズをして自分の遺伝子を子に伝えるとき。もう一度は、その子を危険から守るとき。なーるほど、ですね。人間も、もっと必死にならないといけないようです。
 アナグマはムジナとも呼ばれるが、非常に清潔好きで、寝室や育児室の下敷きはまめに取りかえる。生涯、一夫一婦制を守る非常に夫婦仲が良い。
 キジバトも生涯または長期にわたって一夫一婦を守る、仲の良い鳥だ。
 シャチの群れは平均30頭。メスが統率している。メスはオスの半分の大きさしかないが、統率は力ではなく、知能による。オスは統率力に欠ける反面、アザラシやシロナガスクジラなどを仕留める技術は抜群で、これを幼獣たちにも分配し、食糧調達の面でのヘルパーとしても機能している。
 厳しい生存競争を生き抜いてきた動物界の子育てドラマの数々が紹介されています。「エンペラー・ペンギン」の映画はとても、衝撃的でした。ブリザードの吹きすさぶ厳しい冬のなか,肩寄せあってじっと耐え忍んでいるペンギンたちの姿が忘れられません。

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