弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年8月11日

三国志誕生

著者:尾鷲卓彦、出版社:影書房
 三国志は私が中学生から高校生にかけての愛読書でした。水滸伝とあわせて、そのスケールの大きさに圧倒され、英雄や豪傑たちの知謀と勇敢さに手に汗にぎる思いで読みふけったものです。
 この本は、魏王曹操を見直せと提唱しています。
 曹操の家系は漢の高祖劉邦の時代から400年続いた漢の名門中の名門だった。後漢末の豪雄袁紹は、それに比べるとやっと後漢のはじめころから記録の残る豪族にすぎない。
 中国王朝のトップに立ち絶対的権力を保持する皇帝は、膨大な数の官僚群を通して全中国を支配した。その政治の場である朝廷をうずめる大臣官僚たちはまた、皇帝権力の暴走を制約しようとする一種の敵対集団でもあった。その意味で、皇帝の立場は孤独そのものと言ってよかった。宦官たちもまた、朝廷や社会から見放された孤独な集団だった。そのため、皇帝と宦官とのあいだには奇妙な連帯と相互援助の関係が生じていた。そして、実は曹操の祖父の曹騰は宦官だった。宦官として30余年にわたって、順帝、沖帝、質帝、桓帝の4人の皇帝に仕えたというのですから、よほど人間ができていて、能力もあったのでしょう。宦官も養子をとって、子どもがいました。
 付録として曹操文言集がのっています。これを読むと、曹操という人物が、なかなか大人物であることが、なるほど、よく分かります。決して命しらずの豪傑というばかりではなかったのです。
 徳のうすい私だが、官位高く、重責を担っている。さいわいにも国家安定の機運にめぐまれた。天下を平定させ、異民族も帰順し、なにごとも順調に、ひさしく幸福を教授している。
 もし漢に、私という人間がいなかったら、一体どうなっていただろうか。帝を称し、王を称する者がいく人でていたことか。勢力が強大になったうえ、私が天命というものを信じないため、あいつは不遜な考えを抱いているという者もいようが、まあ、勝手にさわぐがよい。
 また三国志を久しぶりに読み返して、気宇壮大な気分に浸ってみたいと思いました。

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