弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年7月21日

帝都衛星軌道

著者:島田荘司、出版社:講談社
 携帯電話をつかうと、瞬時に、そのエリア基地局が判明する。基地局から電話までの距離も百メートル単位で割り出せる。そして、電話番号、契約者もすぐに分かる。
 ふーん、そういう世の中なんですね・・・。犯罪捜査につかわれるのはよしとしても、それ以外にもつかわれている気がしてなりません。
 Nシステムだって(今はTシステムというのもあるそうです。その違いがよく解りませんが・・・)、はじめは犯罪捜査のみということでしたが、そうでない使われ方をしたケースがいくつも明らかになっています。警察を信用するわけにはいきません。
 この本には、途中でせこい寸借詐欺のような欺しの手口のあれこれが具体的に紹介されています。人の善意、盲点をついた悪どい詐欺です。読んでいるうちに、いやな気分になってきました。でも、実は多いんですよね。弁護士として悪徳商法を毎日のように扱っていて、本当にそう思います。
 後編には、日本の裁判の仕組みが次のように紹介されています。
 日本の裁判官がいかに威張っていて、乱暴で、理屈の解らない人たちであるか・・・。
 殺人というものは、そして一度これを犯した者がどんな異常な心理状態に突き落とされ、永遠に精神をさいなまれ続けるか。戦争ならまだしも、平時のことなんですから。
 後編には前編の謎ときがありますが、ここで紹介するわけにはいきません。それより、東京の地下についての話を紹介します。日比谷公園の地下に巨大な貯水槽があるというのは、私も聞いたことがありました。戦前からあって、秘密の地下施設だったそうです。
 東京の地下鉄の駅に使い勝手の悪いのが多いのは、既にあった軍施設を無理に廃物利用しているから。千代田線の霞ヶ関駅は元海軍の防空壕だった。
 皇居を防衛するために皇居の周囲に環状に設置されていた地下要塞群の跡。それを結んでつくられたのが、現在の東京の地下鉄なんだ。そうだったんですか、そう言われると大手町駅なんかひどいものですよね。まるで迷路です。いったい自分がどこにいるのか、さっぱり分からなくなってしまいます。

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