弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年7月11日

憲法「私」論

著者:水島朝穂、出版社:小学館
 著者の講演を私も聞いたことがありますが、きわめて明快で、説得力がありました。
 自衛隊がイラクへ持っていった重装備には驚かされます。
 84ミリ携行式無反動砲。これはカール・ダスタフといい、スウェーデンのFFV社が開発した。従来の無反動砲には、発射後に後方へ噴出する火炎が大きくて、うしろにいる味方は注意を要し、命中しないと敵の格好の餌食となるという欠点があった。そこで、目立ちにくく、確実性が高く、使いやすいということで導入された。
 110ミリ個人携帯対戦車弾。パンツァーファウストというドイツ製の使い捨て成形炸薬弾。これは化学エネルギーで戦車の装甲に高熱・高圧の爆風を当て、穴を開けて内部を破壊する武器。300メートルの距離から700ミリ以上の装甲板を貫通することができる。
 軽装甲機動車。ライトアーマーと呼ばれ、最高速度100キロで、高機動車より装甲が厚く、対戦車ロケットなどの発射も可能。
 96式装輪装甲車。クーガーと呼ばれ、12.7ミリの重機関銃または96式40ミリ擲弾銃をのせるもの。最高時速100キロで、通常は四輪駆動で走り、オフロードでは八輪駆動へ切り替えができる。コンパクトタイヤを使用しているので、火力脅威のなかを高速で人員を輸送できる。
 このように機動力と火力を大幅にアップしており、明らかに戦闘行動を想定している。
 私は、これらの映像を北海道の佐藤博文弁護士から送ってもらって、パワーポイントで拡大して見ました。すごい迫力です。自衛隊がイラクへ戦争をしかけに出かけたことがよく分かりました。憲法違反の行為だと、つくづく実感します。
 陸上自衛隊は8月までにイラクを撤退するようですが、航空自衛隊のほうは逆に増強されるのです。アメリカ軍が戦死者を減らすために、地上戦より航空戦重視に切り替えるのに符丁をあわせた行動です。いつまで、どこまで日本政府はアメリカの言いなりになるのでしょうか。まったくやり切れません。
 ちなみに、毎日新聞のコラムによると、毎日新聞がイラクから自衛隊が「撤退」と記事にかいたら、けしからんという抗議がとんできたそうです。「退」の字は「敗退」をイメージさせる。だから、小泉政府は「撤退」を「撤収」と言っているのだ・・・。そうだったんですか。ちっとも知りませんでした。でも、アメリカ軍がイラクの人々に勝っていないのですから、その目下の同盟軍である日本の自衛隊が「勝てる」わけがないことは自明の理です。「戦う」前から「敗けている」ことは事実でしょう。少なくとも、私は、そう思います。もちろん、戦わないほうが断然いいのです。
 著者はいろんな歴史グッズを収集しています。私も講演のときに見せてもらったことがあります。なんと自衛隊の地雷まで入手したというのです。どうなっているんでしょうね。自衛隊の武器保管は大丈夫なのでしょうか。アメリカ軍の地雷探知機も持っているそうで、写真で紹介されています。手榴弾もあるそうです。最近、暴力団員の国選弁護人になりましたが、暴力団の武器庫には、それこそ手榴弾から機関銃まで大量にそろっているというのです。恐ろしいことです。
 武器は決してオモチャではありません。これまで人を殺したことのない自衛隊は果たして軍隊として役に立つのか、アメリカ軍は疑っているそうです。いいえ、それでいいんです。人を殺すのに慣れてしまったアメリカ人なんて、人間の顔をした狼にすぎないんです。と言ったら、狼が怒りだすのではないでしょうか。オレたちは無闇やたらな殺生はしない・・・、と。殺したり、殺されたりすることのない世の中にしたいものです。つくづく、そう思います。

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