弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年6月30日

脳のなかの倫理

著者:マイケル・ガザニガ、出版社:紀伊国屋書店
 普通の性交による場合でも、精子と卵子が合体してできた胚の6割から8割くらいは自然に流産している。ひぇーっ、そうだったんですか・・・。
 加齢とともに脳は「やせる」。20歳から90歳までのあいだに脳の容積は5〜10%も少なくなる。なるほど、そうなんでしょうね・・・。
 脳の回転が鈍くなるのは、ミエリンが失われることによる。ミエリンに覆われたニューロンは、いわば高速イーサネットに接続したコンピューターで、ミエリンのないニューロンは普通の電話回線でインターネットにつないでいるようなもの。
 結婚して家族を持つことには人を社会生活に適合させるという効果がある。その輪からのけ者にされた男性は、欲求不満のはけ口を求めて暴力的な行動に向かう恐れがある。男女比がアンバランスになると、社会が攻撃的になってしまう。うんうん、なるほど。
 リタリンという薬を飲むと、SAT(大学進学適正試験)の点数が100点以上アップする。ふむふむ、そうなのか、知らなかったぞ、これは・・・。
 脳は、本人が気づく前に、いくつもの決断をしている。たしかに、そう思います・・・。
 ポリグラフをつかったウソ発見テストには科学的な妥当性がないに等しい。
 脳指紋というのがあるそうです。これは、人種も年齢も性別も、母国語が何かも関係なく、英語の知識も必要ない。ただ、画像に見覚えがあるかないかに応じて生じる脳の活動の記録のみ。この脳指紋法には、思想の自由の侵害にあたるという批判もあるそうです。
 人間の脳は、過去の記憶が間違うようにできている。私たちは、入ってくる情報をことごとく自分に都合よく解釈している。
 記憶が消えやすいおかげで、脳は些細な情報でパンクせずに、重要な情報だけを残しておける。そうですよね、なんでもかんでも覚えていたら、気が狂ってしまいますよね。
 記憶は私たちをだます。というのも本当は顔の一部しか見ていなくても、脳が残りの部分をひとりでに充填するか、想像力で補うかして、顔全体のイメージを完成してしまうから。そうですか・・・、つくりあげるのですね。
 信念を生み出すのは左脳。左脳は、世界から受けとった情報に何らかの物語を付与する仕事をしている。女性よりも男性の方が自説を頑なに手放さない傾向がある。
 人間の脳が、このように科学的に分析されていくと、なんだか心の奥底まで見透かされてしまうようで、怖い気もしますね。

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