弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年6月20日

ベルリン1919

著者:クラウス・コルドン、出版社:理論社
 第一次大戦後のベルリンの状況が庶民生活を通して見事に描き出されています。第二次大戦に至るまでのドイツをあとづけようとする意欲的な大河小説3部作の第一弾です。 660頁もあり、ずっしりと読みごたえがあります。
 ドイツ帝国の首都だったベルリンには200万人をこす人々が生活していた。その人々の1918年冬から1919年冬までの1年間が詳しく語られる。
 ドイツ帝国は戦争をしている。しかし、水兵たちが反乱を起こした。労働者も、戦争をやめさせるためにストライキをしている。片腕をなくした父親が戦場から帰ってきた。周囲には戦没者通知書がどんどん届いている。戦争のせいで、みんな、ひもじい思いをし、凍えている。
 皇帝と将軍たちは勢力圏が広がる。戦争で得をするのは資本家たちだ。戦争はいい商売になる。武器と弾薬はすぐに消費するから、どんどん新しいのがいる。つくるのは工場、買うのは軍隊だ。新しい大砲と弾薬が次々に前線に送られる。そして、その武器で、外国を征服するのだ。だけど、オレたちには関係ない。外国を占領して、オレたちに何の得があるか。得をするのは、またしても資本家だ。そこには石炭や鉄や畑がある。もちろん、製品を売る市場もある。
 そうです。ドイツに社会主義の考え方が広まっていました。しかし、子どもたちの通う学校には、帝国に忠実な教師もいて、ちょっとでも反抗すると、手きびしい体罰を加えていたのです。
 ドイツの社会主義にも派閥がありました。もっとも先鋭的なのはスパルタクス団です。そのリーダーのリープクネヒトは、刑務所に何年も入れられていました。
 11月9日、ドイツ革命が始まり、兵士と労働者が手を組んで立ち上がった。皇帝は退位して外国へ亡命していった。しかし、革命主体がバラバラで、抗争にいそしんだ。
 エーベルトが政治の実権を握るかぎり、将軍と資本家が一緒に政治をするってこういうことなんだ。こんな嘆きが、労働者から聞こえてきます。
 エーベルトは、諸君、すぐに平安と秩序を取り戻さなければ、国民の食料を調達することもままならない。労働者が完璧な勝利をおさめるためにも、平安と秩序が不可欠である。こう演説し、国民の支持を広げた。
 スパルタクス団は少数派だ。内輪もめはたくさんだ。これ以上血を流すのはたくさんだ。平和とパンが欲しい。労働者の切実な声が、強硬派を抑えこみ、反革命がはじまった。
 祖国は崩壊の危機にある。みんなで救おう。敵は外にはいない。内側にいる。スパルタクス団だ。スパルタクス団のリーダーを殺せ。リープクネヒトを殺せ。そうすれば、平和と職場とパンを手にすることができるだろう。
 こんなポスターが貼られるようになりました。
 ローザ・ルクセンブルグが解放されたのは11月8日のことだった。準備が足りなかった。人々の気分をつかまえることができなかった。指導部のいない、気分だけの革命は人々を悲惨な目にあわせ、失敗に終わる。こんな短い期間に、どうやって兵士を味方につけられるっていうのか。連中は、何十年間も、別のことを頭にたたきこまれているんだ。それを数日でくつがえすことなんて、できるか。
 ローザ・ルクセンブルグは虐殺され、遺体はずっと発見されなかった。リープクネヒトは、殴打されたうえ、森を走らされ、後ろから撃たれて殺された。殺人犯たちは軍事法廷で2人が軽い禁固刑を受けただけで、他の者は無罪となった。なんと1962年に国から賞賛もされているというのです。呆れてしまいます・・・。
 重苦しい雰囲気の本です。当時のドイツを決して忘れてはいけないということなのです。
 歴史を学ばないものは盲目と同じだ。格調高いドイツのワイツゼッカー大統領の演説を思い出します。
 日曜日に、フランス語検定試験(仏検)準一級を受けました。なんと10回目、つまり10年前から受けているのです。とても難しくて、ウンウン頭をひねります。年に2回、できない受験生の気分を味わっています。それでも10回目ですので、自己採点では6割をこえ、75点でした(120点満点)。ペーパー試験をパスしたら口頭試験が待ちかまえています。すっごく緊張します。ボケ防止なのですが・・・。

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