弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年6月16日

刑事の墓場

著者:首藤瓜於、出版社:講談社
 知人は警察官の妻です。団塊世代ですから、月給は50万円ほど。今度、夫が大都市周辺の署から田圃の真ん中にある田舎の署に移動したところ、なんと9万円も給料がダウンしたといって嘆くのです。ええーっ、そんなはずはあるまいに・・・。その理由(わけ)を訊くと、やはり例の報償費の分け前が大幅ダウンした影響なのでした。大きな署では人数が多いだけに報償費も巨費にのぼるのでしょう。そこは盆・暮れの雑踏警備で有名なところですから、ますます大きいようです。田舎の署には平和で事件も少ないだけに報償費を捻出する口実もないのです。まあ、それにしても、ちょっと署を異動しただけで月9万円も給料がダウンするなんて・・・、やっぱり異常な世界です。
 この小説は、挫折したエリート刑事が赴任した署は、刑事の墓場と呼ばれるところだったということから始まります。
 外勤の制服警官など皆同じようなものだ。上からあれこれ命令されることに慣れ切っていて、自分の頭で物事を判断することができない。
 知能犯係の刑事は、情報収集と称して新聞や週刊誌の記事を読んでいる時間が少なくないし、体調が優れずに外回りをしたくないときなど、一日中パソコンに向かっていても、捜査データを入力しているところだ、と言えば言い訳が立つ。
 所轄署勤務の警察官の人事権を握っているのは、その署の署長だ。毎年、定期異動の時期になると、県内の所轄署の署長が署内の対象者の異動方針を県警本部警務部に伝える。警務部の人事課は、各署長から提出された要望を勘案しながら、階級と部署に見合った役職にはめこんでいく。組織全体の整合性を保ちつつ、どこからも不平が出ないようにおさめるのは手間がかかるだけでなく、神経を消耗する作業だ。しかし、県警本部の人事課の仕事は、あくまで調整であり、それ以上ではない。
 こんな警察署が本当にあるのだろうか・・・。いまだかつて捜査本部が置かれたことのないような署。署員は、どこか別の署で問題を起こして流されてきた人間ばっかり・・・。でも、その連中の内部結束は固い。
 推理小説なので、最後の顛末は書けません。ええーっ、という感じだったとだけ書いておきます。そんな馬鹿な・・・。ちょっと変わった警察小説です。
 梅雨に入り、下の田圃に水が張られ田植えの準備がすすんでいます。去年はなぜか田植えされず寂しく思っていましたが、今年は大丈夫のようです。この田圃のおかげで、わが家は夏にもクーラーなしで過ごせます。水面を吹いてくる風が涼しいのです。夜になるとカエルの大合唱です。道路を大きな蛙がノッシノッシと歩いていて、車をあわてて停めました。自然との共存にも気をつかいます。

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