弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2006年6月14日
脳は眠らない
著者:アンドレア・ロック、出版社:ランダムハウス講談社
幸いなことに私はすぐに眠れます。いつもは夜12時に寝て、朝7時に起きます。目覚ましはシャンソンです。しばらくフランス語をじっと聞きとるのです。といっても、朝4時半とか5時ころに、トイレに行くことが多くなりました。これも加齢現象なのでしょう。それでも、そのあと布団に入ると、しばらく眠ることができます。出張してホテルに泊まるときには、夜11時に寝て、朝6時に起きるようにしています。その方が体調に良いからです。
ところが、よる眠れないことがたまにあるのです。なぜだろう、と考えると、あっ、分かった・・・。そうなんです。夜7時すぎにコーヒー、紅茶そして日本茶を飲んだら、目が冴えてしまって眠れないのです。夜にコーヒーをガブガブ飲んでも平気な家人にいつも気のせいだと笑われていますが、こればかりはどうしようもない事実なのです。ですから、私は、夜7時すぎにはカフェインのはいったものは飲みません。椎茸酒その他のリキュールと水を飲んでいます。数年前から、夜にビールを飲むことはなくなりました。身体が欲しがりません。外でのビールも、今ではコップ1杯も飲めば十分です。もっとも、これは肥満を気にしているせいもあるのですが・・・。
夢の定義は難しい。目がさめてから語ることのできる睡眠中の精神的な体験を夢と呼ぶ。
人が眠っているあいだも、脳は驚くほど活発に働いている。眼球が激しく動いているときに、被験者を起こすと、ほぼ例外なくはっきりと夢を覚えている。
健康な大人の睡眠は5つの段階がある。入眠前のリラックスした状態で、脳は騒音など周囲の影響をしだいに締め出していき、やがて規則正しいリズムの脳波、アルファ波が見られるようになる。アルファ波は、無心で穏やかな気持ちになったときにあらわれるパターンだ。アルファ波が出ると、続いて睡眠の第一段階に入る。いわゆる寝入りばなで、この段階では入眠時幻覚と呼ばれる、短い夢のような視覚的イメージが浮かぶ。たいがいは、その日の体験に関連したもの。続いて、睡眠の第二段階、10〜30分ほど続く浅い眠りの段階に入る。そこから脳波は、波長の長いゆっくりとしたデルタ波になっていく。除波睡眠と呼ばれる。第三、第四段階の深い眠りに入った。寝言は、睡眠中どの段階でも言うことがあるが、夢遊病の人が歩いたりするのは、第三、第四の深い眠りの段階だけだ。深い眠りが15〜30分続くと、再び第三、第二と段階を上がり、最初のレム睡眠に戻る。筋肉は完全に弛緩(しかん)しているが、眼球は動き、手足もぴくぴくと動くことがある。ところが、生理的には非常に興奮した状態にあり、呼吸は乱れ、心拍数は増え、男女とも性器が膨張する。就寝から最初のレム睡眠に入るまで、50〜70分ほどかかり、その後はおよそ90分ごとにレム睡眠がくり返される。合計すると、大人では一晩の睡眠の四分の1がレム睡眠で、さらに4分の1が深い眠り、残りが第二段階の浅い眠りである。
ほぼすべての夢が視覚的なイメージをともない、聴覚的な要素の入る夢は50%、手触りや気配といった要素をふくむ夢は15%足らずで、味や臭いつきの夢はめったにない。そう言われたら、そうですね・・・。
レム睡眠は、生存のために必要な行動のイメージ練習に役立っている。
夢と空想は違う。子どもたちの空想では、いつでも自分が主人公だ。ところが、夢の中では、しばしば攻撃を受ける犠牲者となり、友好関係であっても受け身の参加者になる。子どもたちは、夢のなかではふだんの自分を思い浮かべる。しかし、空想のなかでは、なりたい自分を想像する。なるほど、そうなんですか・・・。
睡眠の役割の一つは省エネ。眠らなければ、体温調節機能を維持できない。だが、夢を見ているときは、脳は覚醒時以上にエネルギーをつかい、体は麻痺している。そのため、レム睡眠中の哺乳類は天敵に対して、まったく無防備だ。
人間の胎児の脳は、ほとんど一日中、レム睡眠の状態にある。新生児は1日16時間以上眠るが、その半分がレム睡眠。レム睡眠は、神経システムの発達を促す。
新生児が眠りながらにっこり微笑むとき、神経回路を接続する作業が行われている。新生児は、成長してから役立つ対人関係のスキルをレム睡眠中に練習している。人間でも他の動物でも、レム睡眠中に、脳の配線工事が行われている。
私たちの見る夢は、より下等な動物から受け継がれたメカニズムであり、遺伝子に書きこまれた生存のためのプログラムと、日々の体験から得た重要な情報が、レム睡眠中に脳のなかで処理され、統合される。夢では、言葉よりも感覚、とくに視覚的なイメージが大きな比重を占める。だから、人間の夢のルーツは、初期の哺乳類にあると考えられる。
レム睡眠のたびにペニスは自動的に勃起する。その感覚情報が脳に伝わり、脳はそれを説明するためにエロティックな筋書きをつくる。生理的な反応のほうが先で、脳はそれにあわせた夢を紡ぎだしている。そうだったんですか・・・。
大人の夢には、歩く、友人と会話する、セックスするといった行動が現実の生活と同じで、頻繁に出てくる。ところが、読む、書く、計算するという行為は、夢に現れない。こうした活動は人類の歴史において比較的に新しいからだ。夢のシナリオの多くは有史以前の時代によくあった脅威を再現したものと考えられる。
夢のなかで抱く感情の3分の1はネガティブなもの。夢ではポジティブな感情はあまり抱かず、恐怖を感じることが覚醒時より際だって多い。
睡眠中に脳が果たす重要な役割には、昼間抱いた感情、とりわけストレスとなる感情や自信喪失につながる感情を処理することがある。朝、気持ちよくめざめて、新しい一日を始めるには、ネガティブな感情を夜のうちに処理しておく必要がある。
こうなると、夢は私たちが生きていくうえで、本当に大切な役割を担っているということになります。
睡眠中は、新しい記憶を取りこむには最適の時間帯だ。脳は日中の雑多な仕事、たとえば自動車にひかれないように注意といったことから解放されている。加えて、化学物質のバランスなど、睡眠中の脳の生理的な状態が記憶の整理と強化にもってこい。
むずかしい楽曲をマスターするには眠るのが一番。まず一度練習する。2日ほどたってもう一度やってみると、そのあいだに練習をまったくしていなくても、突然、弾けるようになる。新しいスポーツなり楽曲なりを習得するとき、練習効果を最大にするには、少なくとも初日の晩は起きる前の第二段階の睡眠をとりそこねないよう、たっぷり睡眠をとることだ。
人は意識があるから、夢を見る。夢の大切さがよく分かる本です。