弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2006年5月18日
米軍再編
著者:久江雅彦、出版社:講談社現代新書
著者は、冒頭で何万人もの外国軍隊を何十年にもわたって国内に駐留させることが、はたして正常な二国間関係と言えるのだろうかと疑問を投げかけています。まさに、そのとおりです。どうして、アメリカ軍が今も日本の首都周辺にいて、沖縄に大量に駐留しているのでしょうか。日本はまったく独立主権国家ではありません。
小泉政権は、その発足以来、対米関係を何よりも最優先させ、同盟強化の道をひた走ってきた。イラク戦争後、サマワへの自衛隊投入にもふみ切った。対米関係に最大限の配慮を払った結果である。
日本には、今、3万7000人の米兵が駐留している。アメリカの国外に40万人ほど展開しているうち、イラクを除くと、日本はドイツに次いで世界第2位(韓国と同じ)。日本にアメリカ軍が駐留しているのは、戦略的な価値が高いから。大量の生活物資が必要になるが、日本だと、それは容易だ。武器を修理するのも能力に心配はない。地政学的な優位性、豊富な物資、艦艇・航空機の修理に必要な熟練した労働力など、どれをとっても日本に駐留することは最高に高い評価を得ている。そのうえ、日本は思いやり予算として46億ドルも負担してくれている。アメリカ兵1人あたり年間1380万円も日本は税金を投入して負担している。これだけ負担する能力があるのに、司法修習生への給費は負担できないというのです。まったく間違ってますよね。ちなみに、韓国は日本の6分の1、ドイツは12分の1でしかありません。日本の負担が異常に大きいのです。思いやり予算は、きっと日本の軍需産業もうるおわせていると私は見ています。どうなんでしょうか。
このように、アメリカにとって、数あるアメリカ軍の海外駐留先のなかでも、日本はけっして手放したくない基地なのである。そうなんです。日本はアメリカに守られているのではなく、単にアメリカに利用されているにすぎないのです。そもそも、アメリカが日本を本気で守ってくれるなんて考えられますか。それを信じている人は、私に言わせれば、よほどの甘ちゃんでしかありません。アメリカ人は、自分のこと、せいぜい自分の国のことしか考えていないのです。
日本にいるアメリカ陸軍第一軍団とは何者か、が紹介されています。
この第一軍団は2万人の兵力に加えて、2万人の予備役兵や州兵を動員できる。機動・戦闘能力に優れた最新鋭の装甲車両「ストライカー」の旅団を擁している。数ある軍団のなかで、もっとも豊富な戦闘経験を積んでいる。
アメリカの大半の政治家と官僚の知識と関心はヨーロッパにある。それと中東地域だ。経済面を除いて、アメリカにとって日本は対等のパートナーとは位置づけられていない。在日米軍司令官の主たる任務は日本政府との調整と要人の接待だった。
在韓アメリカ軍司令官は大将(四つ星)であり、在日アメリカ軍司令官は中将(三つ星)である。アメリカ軍の運用実態は極東条項と大きくかけ離れていることは、日米安保条約に精通した官僚は、公言しないだけで、熟知している。
いま、日本はアメリカ軍基地の海外移転・整備にともなって3兆円の負担を求められています。当初は7000億円ということでしたが、すぐに3兆円になってしまいました。大変な金額です。政府は新しい税をつくってまで負担しようとしています。いったいなぜ、日本がアメリカ軍のため3兆円もの大金を負担しなくてはいけないのですか。まったく何の根拠もありません。まさに、日本はアメリカの属国でしかないということです。
こんな状態でありながら、愛国心教育を押しつけようとするのですから、信じられません。いったいどんな国を愛せというのですか。いつもアメリカべったり、いつだってアメリカの言いなりでお金を出さされる。そんな自主性・主体性のない国をどうやって愛せというのでしょう。ひどい国です。いえ、今の小泉内閣の政策が間違っているというだけのことです。
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