弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年5月15日

女性のからだの不思議

著者:ナタリー・アンジェ、出版社:集英社
 東京都知事の石原慎太郎は生理のとまった女性は役に立たないババアだと口汚くののしりました。まるで自分には母親がいないかのような下品な口調で、顰蹙を買いました。ところが、金持ちマダムには石原慎太郎のファンが多いのです。あーら、そんなことは私のことではないざます。それは、きっとしもじものうらぶれたおばさんたちを悪く言っただけでございますわ・・・。とても信じられない発想です。きっと人種が違うのでしょう。
 閉経後の50代の女性には体調が大変よい人が多い。閉経後の女性たちは一番の働き者であることが多い。オランウータンに閉経はない。死ぬ前に生殖能力のプログラムが停止するのは、人間の女性だけ。
 年をとった女性は、頭がやわらかくて戦略的で、援助する相手を自分の子どもや孫に限定しない。一族のなかで助けが必要な子どもの誰にでも手を差しのべる。人間の女性をほかの霊長類と区別するものは閉経ではなく、丈夫で長持ちな閉経後の寿命だ。
 最初の役割分担は、男と女ではなく、子を産む女と閉経後の女にあった。母親が産み、祖母が世話をする。この盟約があれば、生殖力と移動性に限界はない。
 肉体の壮健さが最大に発揮されるのは女性。男性は女性ほど長生きせず、寿命の男女差はどこの国にもある。たぶん、男はそれほど長生きする必要がないし、長生きしたがらないのだろう。
 そうなんですか、男は長生きする必要がないので、長生きできないんですか・・・。いやあ、これは私にとってかなりのショックでした。社会にいきるストレスが男の方に強いから長生きできないのだとばかり思っていました。
 世界は女を中心にまわっている。大多数の霊長類は社会集団をつくって暮らし、集団の核は雌である。雌は生まれた集団に生涯とどまり、雄は思春期に集団を離れて近親交配を防ぐ。外部の雄が集団に入れてもらうときには、仲間にするかどうかは雌が決める。雌は余計な雄がいるのを好まない。だいたいにおいて雄はあまり役に立たず、子どもの世話もせず、すぐに退屈してケンカを始めてしまう。そのうえ、雄はしばしば雌に嫌がらせをする。
 チンパンジーは明らかに雄が雌を支配している。ボノボの雌はグループをつくることによって雄よりも優位に立つ。ボノボは祖先の特徴をより多く備えた種で、チンパンジーとヒトはそこから派生したサルなのかもしれない。
 アメリカでは、貧困層の大半は母子家庭である。子どものいる夫婦が離婚すると、ふつう女性は貧しくなり、男性は逆に豊かになる。男と男社会の投資や庇護を失うようなふるまいは、いまも代償が高く、うっかりしたことはできない。
 人間の赤ん坊は顔を母親の背側に向けて膣から姿を現しはじめる。ほかの霊長類では仰向けで出てくる。赤ん坊を上向きにしてやろうとすると、背骨と首を痛めてしまう危険がある。ヘソの緒がからんでいても、ほどいてやることもできない。母親には助けが必要だ。
 赤ん坊は無力で、痛々しいほどぎこちなくしか動けないが、母親のお腹の上にのせると、においの手がかりだけで胸にまでにじり寄っていく。乳房の片方だけ洗うと、赤ん坊は洗っていない乳首を探しあてる。
 胎児は自分のサイン入りのにおいを尿に分泌し、それが羊水に混じる。羊水は循環して母親の尿として排出される。こうして母親は出産前に赤ん坊のにおいがわかり、近くにいる父親も胎児のにおいになじむのだろう。
 夫婦のどちらかが相手のにおいを嫌いだと、その結婚は破綻する。触覚、味覚、嗅覚。愛を求めるときには、あらゆる感覚が総動員される。
 うーむ、人間のなかで女性はやっぱり半分以上の地位を占めているのですね・・・。弁護士の仕事を通じて、日々、実感しています。
 庭に朱色のアマリリスの双花が咲いています。ジャーマンアイリスは終わりかけ、すっくと背の高いカキツバタの青い花が誇らしげです。シャクヤクは固いツボミのままです。昨年はとうとう花開くことができないままでした。何かが足りないようです。
 今朝、庭先に黒い小さなヘビを見つけました。じっと動かないので変だなと思ってよく見ると、お腹がふくれています。きっとカエルを飲みこんで、消化中なのでしょう。きのう庭を手入れしていると、カエルがたくさんとびはねていました。

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