弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年3月23日

元アイドル

著者:吉田 豪、出版社:ワンマガジン
 私はテレビを全然見ないし、芸能界にも歌謡曲にもまったく興味がないので、アイドルと言われてもちっともピンと来ない。でも、活字になると、好奇心から読んでみたくなる。この本を読むと、アイドルの世界、そしてその生活がいかに苛酷なものか、すこしばかり想像できる。
 元アイドルは人間不信に陥る人が少なくないし、自律神経失調症になる人が多い。芸能界にはイジメるのが好きな人がいる。わざわざ追いかけてきて嫌味を言ったり、ドラマでわざとセリフ変えてみたり、裏と表がすごい人だとか・・・。
 こいつら、いつか散弾銃でブッ殺してやりたいと思った。嫌な連中を全員一ヶ所に集めて爆弾で殺してしまったら、どんなに気持ちいいことだろう、なんて考えてしまう。
 それで、20歳のときに自律神経失調症で具合が悪くなってしまった。
 学校でいじめにあったアイドルが意外なほど多い。目立つ存在だったので、ねたまれたのだろう。オーデション受けているうちに分かってきたことは、どんなドラマでも主役って、最初から事前に決まっているということ。その裏には、お金がからんでいたり、プロダクションとテレビ局の関係とか、汚いものがいっぱいある。
 アイドルの睡眠時間が2時間というのはウソではない。恋愛する暇もない。撮影で8時間、完全徹夜ということもあった。4日目ぐらいから座るのも危険になる。寝ちゃうから。そうすると、顔どころか、精神的にもボロボロになる。
 人生で何を消したいかといったら、あの2〜3年間を消してしまいたい。
 仲間の集まりに顔を出さないと悪口を言われて無視されるって恐怖心から、何があっても電話ひとつですぐ飛んでいった。だから、遊んでいたのに、それがまたストレスになっている部分もあり、すべてが悪循環になっていた。
 芸能界って、取り替えのきかない世界だと思われているけれど、実は簡単に取り替えできるところ。あの人がいなくなったら無理だと思われるくらいの人が姿を消しても、結局は、何ごともなく芸能界はすすんでいく。
 タレント仲間も嫌い、スタッフも嫌い、ファンも嫌いっていう状態になる。もう人間が全部嫌になってしまう。
 23歳のとき、ジャックダニエルを泣きながら1本飲んでしまったら、翌日、お婆ちゃんみたいに肌がシワシワになっていた。病院に行ったら、内蔵がおかしくなっていて、それが全部顔に出てきていたことが分かった。
 元アイドルの人は、大体、自律神経をおかしくしたり、自殺を考えるくらい追いこまれたりしている。
 セスナに乗ってゲロを吐いたときも、カメラの前では元気に笑顔で手を振って、下向いて吐いてまた出てきて手を振る、そんな感じで仕事を続けた。
 給料は、せいぜい6万円とか10万円。脱いだら3倍というので脱いだら、なんと15万円に上がっただけ。
 衣装代は自腹で、寮費も給料から引かれてしまう。デビューして貧乏になっちゃった。
 服は自前で、同じ服を2度と着たらダメ。お金を払いながらアイドルやってる感じ。給料は7万円。服は母に買ってもらってた。全部で1000万円にはなる。芸能活動でペイなんかできない。
 すさまじい世界ですね・・・。

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