弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年2月16日

心で知る韓国

著者:小倉紀蔵、出版社:岩波書店
 この著者の本はいくつも読みましたが、毎回、なるほどなるほど、とつい感心してしまいます。さすが哲学専攻の教授だけはあります。
 韓国のドラマでは、恋愛ものであろうが社会ものであろうが何であろうが、最初の数回は主人公の子ども時代の話をするのが定番だ。これがないとドラマが始まらない。そこでは、主人公とその周囲の人物がいかなる不幸を背負わされたのかという説明過多の描写がなされる。
 恨はハンと読む。日本語のうらみとは意味が違う。うらみは相手に対して抱くものだが、ハンは自己のなかで醸(かも)すもの。ハンは、特定の相手に対する復讐によって解消されるというよりは、いつの日にか解消されるもの。
 韓国ドラマはハッピーエンドで終わる。そうでないと視聴者がいっせいに抗議してくる。スポーツ選手も歌手も俳優も、自分たちの技術のみによっては評価されない。その人がいかに道徳的であるかということによって評価される。それは、社会的に俳優という職業の地位が低く、そのため社会から道徳的なふるまいを要求される圧力が日本よりずっと強いからだ。つまり、そのようなふるまいをしなければ社会的に葬られてしまう危険性を常にともなっている。
 韓国人は、人の容姿に非常に強い関心を示す。また、人の容姿を評価するのにいたって積極的で、遠慮がない。小さいものは欠陥のひとつ。とにかく嫌われる。
 若い世代は男性が多く、女性をゲットするのに必死だ。10回切って倒れない木はないというのが彼らの信条だから、とにかく猪突猛進する。たとえば、公衆の面前で女性に花束をあげたり、友だちとの集まりで自分の恋人を徹底的にほめあげる。日本の女性なら恥ずかしいからやめてというところ、韓国女性は意外にこういうのを喜ぶ。自尊心が満足されるから。
 うーん、本当でしょうか。もし本当だとしたら、やっぱりお国柄はかなり違いますね。日本では自宅に来客があったとき、出前の寿司をとってもてなすことがあり、それは失礼にあたらない。ところが韓国では絶対にありえないこと。韓国人は、自分が著しく蔑視されているか、存在を軽視されていると思う。その悔しさと怒りを一生忘れないだろう。
 えーっ、そうなんですかー・・・。寿司の出前って、日本ではそこそこのおもてなしですよね。
 韓国では詩集がよく売れる。書店で日本人はマンガを立ち読みするが、韓国人は詩集を立ち読みする。しかし、だからといって韓国社会が浪漫あふれるポエジーの世界かといえば、その正反対で、弱肉強食のドロドロの世界でもある。だからこそ、人々は厳しく苦しく現実から目をそらすために純粋な叙情性を求める傾向がある。そうなんですか・・・。
 大統領になった年齢は、朴正熈 46歳、全斗煥 49歳、盧泰愚55歳、金泳三65歳、金大中72歳。そして、今の盧武鉉大統領は・・・。商業高校卒業から弁護士となり、国会議員、大統領とのぼりつめ、コリアン・ドリームを体現している。
 韓国社会ははげしい上昇志向の渦巻く社会である。
 近くて遠い国。似ているようで違う国。つい、そんな気になってしまう本でした。

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