弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年2月 3日

北朝鮮軍の全貌

著者:清水 惇、出版社:光人社
 北朝鮮軍の現状は、兵器の老朽化、士気の低下、規律の弛緩などで、戦争での勝利はおろか、組織的な戦闘を展開できるのかどうかも怪しい状態にある。
 正規軍は大規模な演習や挑発行動や軍事パレードを行うことで、弱体化しているように見えるが、本当は戦えるのだというパフォーマンスを諸外国に向けて演じている。
 北朝鮮軍の内部には4重の監視体制が敷かれている。総政治局に所属する政治将校、秘密警察である国家安全保衛部、軍の情報機関である保衛司令部、さらに労働党組織指導部直属の通報員。このため、1995年以降3回あったクーデターはすべて未遂で終わっている。
 北朝鮮軍がクーデターを起こすとすれば、治安機関や金正日の親衛隊ともいえる護衛司令部が寝返るなど、体制維持システムが末期状態になったとき以外には考えられない。
 金正日は、いまだに金日成の威光を利用せざるを得ない。それは金正日にカリスマ性がないから。
 北朝鮮では金日成と金正日だけが将軍と呼ばれる。金正日の生母である金正淑も白頭山の女将軍と称しているので、この3人を白頭山三大将軍と呼ぶ。
 人民軍の兵力は、地上軍が100万人、海軍が6万人、空軍が11万人であり、正規軍だけで117万人いる。このほか、教導隊や労農赤衛隊などの準軍事組織があり、こちらは700万人ほどいる。北朝鮮軍のなかで日本にとってもっとも脅威となるのは特殊部隊12万人の存在である。
 北朝鮮軍が朝鮮戦争のときのように南侵を開始したときに、ソウルは火の海になるかどうか検証されています。結論は、ならないというものです。なぜか?
 北朝鮮軍の長射程砲300門はその大半が地下施設にあるため、ソウルを火の海にするのは難しい。その前にDMZ(非武装遅滞)を突破するため10万発をうちこむ必要がある。それすらやっとではないかと思われるから、ましてやソウルを火の海になどできるはずがない。
 そしてDMZを突破するには、自軍と米韓両軍が埋めた地雷を処理しなければならない。南侵トンネルは有効に機能しないだろう。そのうえ、制空・制空権を米韓両軍に握られている。これでどうして南侵できるというのか・・・。
 北朝鮮軍が、いわば破れかぶれの状態で南侵してくる危険性がないわけではありません。しかし、それについては外交上の努力でくいとめるしかないのです。北朝鮮軍の脅威をことさらあおりたて、日本の自衛隊をもっと強くしなければいけない。そのためには憲法9条をなくせ、と叫ぶ人がいます。しかし、私はそれは間違っていると考えています。戦争にならないように努力すべきなのです。その最大の武器が憲法9条だと私は考えています。

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