弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年2月 3日

ウォール街、欺瞞の血筋

著者:チャールズ・ガスパリーノ、出版社:東洋経済新報社
 人々はインターネットでお金持ちになると信じたかった。感情が牽引力となった。
 建設労働者、秘書、バーテン、学校教員など、経済学を学んだことさえない人々が、銀行から預金をおろしてミューチュアルファンドに投資をしたり、証券会社から株を直接買って買いあさりはじめた。アナリストは投資家に下がったら買えと勧めることによって、値動きの激しいハイテク銘柄が下落したときでさえ、何十億ドルという資金を誘導して市場を下支えした。多くの投資家が、いい時期は永続きするものではない、という話を聞きたくないのは当然だろう。
 ウォール街のブローカーたちは、できるだけ多くのカモの資金を市場に呼びこむという、より大きな戦略の一翼を担っているにすぎない。最優良顧客は大企業だ。個人投資家が公平に取り扱われることは決してない。大手証券会社は、小売顧客を第二級市民として取り扱っている。
 貧困層に個人的なサービスを提供する時間的な余裕はない。このようにうそぶいている。
2000年3月からのピークから2001年3月までの1年間で、株価は60%も下落した。この損失はアメリカの歴史上最大規模の破壊(クラッシュ)だ。それは2兆5000万ドル、いや、他の市場をあわせると4兆5000億ドルが雲散霧消した。
 ウォール街の仕組みについてほとんど知識のない中産階級のアメリカ人が、ゲームのやり方を熟知しているブローカーに一生涯の貯蓄を預けてしまった。それは、短期間はうまく機能していた。しかし、市場が暴落したとき、すべてを喪ってしまうことになった。
 わずか3年ほど前には、アナリストはウォール街でもっとも人気のある職種だった。それが今では、大きなトラブルを引き起こすため、投資家にもブローカーにも、そして証券会社の法務部にも嫌われるパリア(最下層民)だ。
 ホント、アナリストって、今では口先だけの、あることないこと口からでまかせを言って信じこませようとするペテン師のイメージがすっかり身についてしまいましたよね。
 投資家にだまされるな。サブタイトルにそう書いてあります。今や多くの日本人の若者が自分こそはだまされないと信じ、ひがな一日、パソコンの前にすわりこんで投機の道に走っています。いえ、家庭の主婦も参加しているそうです。こんなことでいいのでしょうか。こんなことしてたら、日本の将来はお先まっ暗なのではありませんか。

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