弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年1月10日

アラン・デュカス

著者:小椋三嘉、出版社:新潮社
 フランス料理の有名シェフの素敵なレストランとご馳走を紹介した大判の写真集です。私は1ヶ月間ほど、寝る前の10分間、この本を手にとって燦々と陽のさす南フランスの開けた野山を前にしたテラス・レストランで手のかかった料理を美味しくいただいている姿をしっかり目に焼きつけて布団に入っていました。これで幸せな眠りが保障されるのです。3800円もする高い本ですが、1ヶ月ほども美食を目で堪能できたわけですので、それを考えたら安すぎて申し訳ないほどです。でも、一度は現地のホテルに出かけてみたいと本気で思っています。
 道路の両側にはオリーブの木が育ち、ラベンダーの花が咲き誇っている。あたりにはハーブのにおいが立ちこめる。観賞のためではなく、レストランでつかう自家製オリーブオイルやラベンダーエッセンスになる。レストランの周囲にある広々とした庭には、鹿や馬やロバなどが飼育され、手入れの行き届いた菜園には、トマトやナス、ニンジン、ジャガイモといった見慣れた野菜から、ハーブや薬草、今は市場から消えてしまった珍しい品種まで、さまざまな種類の野菜や果物が育つ。バジルだけで15種類、トマトになると35種類もの品種がある。そのほかバラ園をはじめ、観賞用の花などを楽しむこともできる。
 夏には、はるか遠くの山まで見渡すことのできるテラスで、その雄大な景観を眺めながら食事が楽しめる。
 秋は、何と言ってもジビエ料理。そのなかでも小鳩は比較的くせがなく、食べやすい。小鳩のもも肉をココット鍋で焼いてから、オーヴンで火を通す。そこへニンジン、新タマネギを入れ、再びオーヴンへ。フォアグラの両面を軽く焼いた後は、その旨みと香りをグリーンピースに移しながら炒め、鶏のフォンで煮る。別々に調理した食材をココット鍋に戻して完成。
 黄金色に焼きあがった小鳩のもも肉と、今にもとろけ出しそうなフォアグラが陶器製の鍋にすわり食欲をそそります。ニンジン、タマネギ、グリーンピースなど野菜もたっぷり。ああ、おいしそう・・・。
 もうひとつだけ料理を紹介します。あっと驚きました。巨大なフォアグラが丸ごとこんがり黄金色に焼きあがり、黒コショウと白い食塩が美しさを引きたて、もちろん食欲もかきたてています。
 丸のままで500グラムほどもある鴨のフォアグラをポワレして表面に焼き色をつける。それから200度のオーヴンで7分間。イチジクを24時間つけ込んだポルト酒を、イチジクごとポワレで煮詰めながらとろみを出したソースをかける。仕上げにフルール・ド・セル(塩)と黒コショウを振ってサービスする。口の中でとろりとしたフォアグラとポルト酒づけのイチジクの甘みが官能的に溶けあったところに、カリカリとした塩とコショウが食感と味わいにパンチを利かせる。
 あー、もうたまんないですね。見るたびに口のなかによだれがたまってきます。うーむ、食べてみたい。そんな叫びをあげてしまいました。ナイフを入れると、トロトロのフォアグラが溶けだし、鼻腔の奥まで芳しい香りが届きます。ああ、なんと頭がクラクラしてきます。だ液がたまってきて、そっと舌の上に乗せます。うーむ、舌になじむ・・・。至福のとき。赤ワインはほんの少しでいいのです。でも、これだと、やっぱり、グラス3杯は軽くいってしまうでしょうね。でも、それだけでいいのです。舌がバカになってしまっては、せっかくの料理の良さが分かりませんからね。
 南フランスはいいですよ。ぜひ、もう一度行ってみたいですね。なにしろ、夏は夜10時近くまで明るいんです。そのうえ、めったに雨が降らないのです。ですから、観光客として、こんなに過ごしやすいところはありません。エクサンプロヴァンスに4週間滞在したのも、今から13年も前のことになりました。また行きたいと本当に思っているのです。はい。ご一緒にいかがですか・・・。

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