弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年12月28日

亡国

著者:平野貞夫、出版社:展望社
 小泉に踊らされてはならない。オビに大書きされている言葉です。本のサブ・タイトルには民衆狂乱し、「小泉ええじゃないか」ともあります。著者は最後は自民党から参議院議員となった人ですが、長く衆議院事務局の職員として働き、その後、園田直衆議院副議長の秘書として2年間、前尾繁三郎衆議院議長の秘書を4年つとめました。
 政界を引退した今、著者は次のように述懐しています。
 政治とともに馬齢を重ねた私にとって、政治は私の生きる証ではあったが、残念ながら生きる希望にはなりえなかった。
 若いとき、政治家とは心の底に憂国の思いを抱いている人たちではないのかと畏敬の念をいだいていた。しかし、現実に遭遇したのは、これが日本の政治家と我が目を疑うようなことばかりだった。
 あくなき権力闘争と金権政治の腐臭に満ちた国会内で、謀略と嘘で固めた国体政治の裏方として、長く働いてきた私は、ここに亡国のドラマを書きつづる。
 メディアを通じ、魔術師小泉が全身で演じた狂気の催眠術によって国民は洗脳されたのではないではないか。アメリカの投機資本の餌食になってはならないのだ。
 自民党をぶっ壊すと言って民衆の支持を受けた小泉純一郎が自民党を亡霊のようによみがえらせ、日本の国をぶっ壊すことになるとすれば、これは一大事である。
 ええじゃないか、ええじゃないかと踊り狂っているあいだに、私たちの国がどこに向かってすすんでいくのか、忘れ去ってはいけない。
 以下はこの本に書かれていることではありません。小泉・自民党が先の総選挙で大勝したのはメディアによる世論操作に成功したから。自民党は「コミュニケーション戦略チーム」(略称・コミ戦)をつくり、「コミ戦戦略統括委員会」をつくった。チームのメンバーは自民党職員で幹事長室長、自民党記者クラブ担当、政調会長秘書、広報本部長、遊説担当、情報調査局員、それに広告代理店「ブラップジャパン」(B社)の担当者。小泉政権は低IQ層への働きかけ」を具体的にすすめた。小泉政権が照準にした「低IQ層」とは、主婦層と子ども中心、シルバー層、具体的なことは分からないが小泉首相のキャラクターを支持する層、閣僚を支持する層で、平たくいうと、お上の言うことを疑いもせずに信じ、従順に従う層だ。
 テレビ局を味方につけ、ターゲットにされた「低いIQ層」はそれまでの棄権から投票へ駆り立てられた。小泉劇場効果で若者を中心に投票率は7%上がり、そのほとんどが自民党に投票した。フリーターやニートたちが、生活は今は苦しいが、小泉改革で、将来はきっと生活を楽にしてくれると考えて自民党に入れた。また、コミ戦は、候補者には郵政しかしゃべらせなかった。有権者はみんな見事にひっかかった。
 うーん、このように言われてしまうと、本当に嫌になってしまいます。若者よ、しっかりせよ、そう簡単に騙されるなよ。自分を苦しめているものの正体を見破り、怒りをもって批判しよう。こう呼びかけたい気分です。

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