弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2005年12月28日
更年期
著者:マーガレット・ロック、出版社:みすず書房
日本でふつう言われている更年期の症状はアメリカのメノポーズにともなうものとはかなり違っている。アメリカではメノポーズとは閉経のことであり、ホットフラッシュと突然の発汗のみ。頭痛などの身体の痛み、めまい、肩こりは女性も医師もメノポーズに関係があるとは考えない。日本人女性は、ホットフラッシュを訴えず、急な発汗もまれだ。
更年期をメノポーズと訳してはならない。アメリカの女性の大多数の頭のなかで、メノポーズと閉経(月経の終わり)とが同義語になってきた。
人間の最長可能寿命は90歳から115歳のあいだと推定されている。これは過去10万年のあいだ、人間は理論上、この高齢まで生きることが可能だったということ。
日本の平均寿命は1891年から1989年のあいだに44歳から82歳にまで上昇したが、50歳の女性の平均余命は21年から33年に延びただけ。この100年のあいだ、ヨーロッパでも日本でも、女性はひどい搾取や貧困にさらされないかぎり、乳幼児期をのり切って成人し、お産で死ななければ、70歳以上まで生きられる可能性は高かった。
日本食には大豆と豆腐、味噌など多くの大豆製品が含まれ、植物性エストロゲンに富んでいる。天然のエストロゲンを含む食生活はホットフラッシュの発生にかなり大きな違いをもたらしうる。
日本の平均寿命は世界一で、男性76歳、女性82歳。100歳以上の人口は3000人をこえている。もし、現在の傾向が続けば、2025年には225万人以上が認知症(老人性痴呆)を患い、その3分の2が女性。200万人以上が寝たきりで、またその3分の2が女性。現在、65歳以上で寝たきりの人は60万人をこえ、その大多数が自宅にいる。
高齢の1人暮らしの女性は男性の4倍の128万6000人いる。特別養護老人ホームの入居者の70%以上、一般の老人ホームの入居者の93%が女性で占められている。自宅で介護を受けている寝たきり老人の93%も女性。アルツハイマー病の高齢者の80%も女性。
女性は、いま日本の全就労者の40%を占め、15歳から64歳の女性のうち58%が現役で働いていると推定されている。
ロマンス小説からも社会の変化が読みとれる。かつては、どの本もシンデレラ物語風のものばかりだった。しかし、近ごろは、ヒロインは結婚しようか、キャリアをもとうかと迷っている。
多くの日本女性は、それなりに満足のいく人生を送っており、調査に回答した人の90%が現在の生活を幸せだと思うと答えた。しかし、話を聞いてみると、多くの女性が苦労を経験したばかりでなく、いまも不当な扱いを受け、不安定な生活を余儀なくされているという。では、なぜ大部分の女性が自分は幸せだと答えのか。そのひとつの理由に、もっと苦しい目にあった人もいるのだから、自分は今の境遇に感謝すべきだと話をしめくくるのだ。回答者の53%は現在の日本社会は女性を不公平に扱っていると考えている。
中年女性に訊くと、年齢によって経験が増すので、年をとると、なすがままに少々遊び心でもできるようになる。成熟の結果として新たに手に入れた自由を存分に楽しんでいる。 しかし、多くの女性が平均寿命(82歳)まで生きたいと願っていないのが非常に興味深い。45歳から60歳までの人間の年齢は、成熟期、つまり十分に円熟した時期と呼ばれる。
アメリカでは、2005年に50歳から64歳の女性が2500万人をこえる。これらの女性のためのホルモン補充両方の薬剤と医師のフォローアップ・ケアのための費用は、全米で年に35億ドルから50億ドルになるだろう。
メノポーズとその副産物は、現在、大きなビジネスになり、アメリカ国内の1990年のエストロゲンの売上だけでも4億6000万ドルにのぼる。
この本は2005年9月に出版されたものですが、1980年代に日本人の女性を調査した成果をまとめたものなので、今とは異なっているところがかなりあると思いますが、やはり変わらないところもあると思いながら興味深く読みました。2段組みで400頁以上ある大部の本です。
実は、私は、この本を人間ドッグ(いつも一泊しています)に持ちこんで読んだのです。男にも更年期があると聞いて久しいのですが、実感はしませんでした。同年代の男性からもあまり聞いたような気はしません。ただ、同世代でも男女を問わず、とてもくたびれた顔つき、身体をしている人が多くて、本当に驚きます。生き生きしている人の方が少ない気がします。それだけ、この社会に生きていくのは厳しいことなんだな、失業せず、定年退職の心配もない私は本当に恵まれているんだと実感をさせられます。
人間ドッグの結果では、総コレステロールが少し高いので、糖分の取りすぎに注意するように、とか、体重を減らしなさいということでした。減量って、本当に難しいんですよね。鏡を見ると、我ながら中年太りのひどさに目を覆いたくなります。
身体を動かすのは週1回の水泳(30分間の自己流クロールで1キロ泳ぎます)と日曜ガーデニングくらいです。あとは、毎日、規則正しい生活と7時間の睡眠時間の確保、そして大量の本を読んでの気分転換というのが私の健康法です。