弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年12月 7日

萌え萌えジャパン

著者:堀田純司、出版社:講談社
 この本を読むと、つくづく日本は変わったと思い知らされます。私のあずかり知らないところで、こんなに巨大なマーケットができあがっていたなんて・・・。日本の社会の闇の深さに愕然とさせられます。オタク族は、今や2兆円市場になっているのです。ええ、商業主義にもしっかり毒されているわけなんですよ。
 そもそも萌えとは何なのか。本来は芽が出るという意味だが、今では、特定のキャラクターないしその一部について深い思い入れを抱き、心が奪われる状態を指す言葉。
 萌える気持ちは古き良き時代の、あの初恋に似ている。魅力的な対象の現実の不在から発生する不安定さ。その補完。ふれたい、でもふれられない。このもどかしさ・・・。
 キャラクターは実写ではなく、しかも写実ですらない。それゆえにこそ現実が解き放たれて、深く人の本態をわしづかみにする魅力を放つ。キャラクターは、魅力的であればあるほど、現実でないからこそ現実を超えた魅力をもつという矛盾を、愛する者に痛切に感じさせる。うーむ、なるほど、そういうことなのかー・・・。といっても、実は分かったようで分かりません。私にとって、それは難解な哲学的な解説そのものです。
 萌え系は文系の人より、むしろ理系の人にこそ深く親しまれる。そんな傾向があるそうです。また、萌え系にはグッズまであります。そのヒット作が、このところ有名な抱きまくらです。
 抱きまくらは最終崩壊兵器だ。愛好者の人格が崩壊してしまう。
 本来サブカルチャーであったマニア層が、90年代の日本社会では大きな消費集団を形成した。1994年に「セーラームーン」は年商200億円を達成した。1995年には、そのキャラクターグッズは5000種に及び、累計売り上げ高は2000億円になった。なんと、なんと・・・。そのすごさには息を呑むものがあります。
 コミックマーケットは、3万5000サークル、51万人の人を日本全国から集める世界最大のイベントになった。1日に1万部以上が売れ、トータルで20億円の金額が動いている。ええーっ、なんということでしょう。とても想像できないスケールです。
 2003年の出版物全体の販売部数のうち、漫画の占める割合は38%。漫画家は4500人もいる。フランスにも日本の漫画が、そのままマンガとして進出しています。
 ちなみに、私のフランス語学習歴は30年をこえています。ちっともうまく話せませんが、あきもせず、こりることもなく毎週、日仏学館に通い、毎年2回、仏検を受けています。なんとか準一級には合格しましたので、今は仏検一級にチャレンジしています。手元に残っている問題冊子をみたら、初めて受けたのは1995年でした。ですから、なんと10年以上も受験していることになります。これには我ながら驚いてしまいました。10年前ひと昔といいますが、10年前の無暴さには呆れてしまいます。今でもまだ合格圏にはほど遠いのですが、それでもようやく4割台の点数がとれるようにはなりました。フランス語を聞いて耳で分かるようになったのがうれしくて、続けています。これも一種のオタクなんでしょうね。自分でもそう思います。
 萌えの対象は声優にまで及んでいる。10代の女の子の将来なりたい職業の9位に声優がランクインしている。たかがオタクの世界だなんてバカにしてはいけない。そんな日本社会の現実をよくよく思い知らされる本でした。

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