弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年11月15日

自立への苦闘

著者:全国統一協会被害者家族の会、出版社:教文館
 今でもオウム真理教の信者が全国に何百人もいるといいます。まったく信じられません。統一協会の方もいぜんとして滅亡していないというのですから、驚くばかりです。例の集団結婚式によって韓国人男性と結婚し、韓国に住んでいる日本人女性が5000人はいるといいます。見ず知らずの人と結婚させられるなんて(結婚するなんて・・・)、どうなってるんでしょうか・・・。
 私も勝共連合の霊感商法で600万円もするツボを買わされた人の被害回復をめざしたことがあります(警官が出動するなどの騒動になりましたが、なんとか取り戻せました)。
 この本は、統一協会に入っていく過程を描いて、見事にその本質を暴いています。なるほど、そうだったのかー・・・。改めて、その巧妙さに感じいりました。
 統一協会に入会する信者は、決して特異な人格の人ではなく、むしろ、まじめな人たちだ。これまで親に反抗したことのないような人、向上心があって、人を疑うことのない、信じやすい人などが入会することが多い。
 伝道の入り口であるビデオ・センターで初めに見せられるのは、マザー・テレサや三浦綾子原作の映画「塩狩峠」など。献身的な犠牲精神が強調される。
 ビデオ・センターからツーデイズまでに半数が脱落するが、ツーデイズまで残ると、やめる率は激減する。暗い重い話を連続して聞かされ、強い絶望感が与えられる。イエスの処刑の場面がリアルに再現され、その悲惨と悲しみの激しさから、聞く人の頭の働きがとまったようになり、現実感が失われる。まるで、自分がその場にいるかのような感覚になり、物事の是非を判断する能力が著しく落ちてしまうのだ。その直後、メシアが今まさに、この世に存在するという希望にみちた話を聞かされる。この落差が聞く人の心をつかむ。
 照明が落とされた会場は号泣に包まれる。文鮮明がメシアであることについて、理論的とか合理的な説明はまったくない。感情をゆさぶって、受け入れさせてしまうのだ。
 ビデオ・センターに通った100人のうち、なんと5人が献身者になるといいます。大変な確率です。仕事を捨て、親を捨て、文鮮明の指示があれば道徳的・倫理的に間違ったことでさえ正しいことと信じて実践する人間になったのです。信じられない高率です。
 肉身生活はたかだか100年、霊界は永久。霊界における人生こそ本当の自分の人生。霊界での人生のために、現世の利益を捨て去ることは何でもない。どんなに親や夫やまわりの人たちから「おまえのやっていることは間違っている」と批判されても、霊界に行ったらみんな分かってくれる。霊界に行ったら感謝されると思うので、その批判は心をうたない。もともと、両親はけがれた性交によって自分を生んだ穢れた血統の存在である。サタンを長とするサタン側の編隊構造に両親は属している。
 こう思わせているのですから、親からの説得はよほど腹を決めてやらないと効き目がないわけです。信者を脱会させるには大変な苦労がともないます。文鮮明の指示に逆らうことは地獄に堕ちることと思い込まされているのですから大変です。そして、脱会したあとも、すぐに普通の人には戻れません。自主的に物事を考えることをしない(できない)生活を続けてきたため、自分の判断で考えられなくなっているからです。マインドコントロールは脱会後もなかなか脱することができません。どんなときにも希望を失わず、あわてず、あせらず、あきらめずにやっていくしかありません。愛情のみを頼りとして、心の扉を開いてもらい、心の残像を少しずつ取り除いていくしかないのです。
 統一協会の脱会に関する本ですが、オウム真理教をはじめとするカルト集団一般から脱出して自立するためにも役に立つ本だと思いました。

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