弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年11月15日

クジャクの雄はなぜ美しい?

著者:長谷川眞理子、出版社:紀伊国屋書店
 10年前にも読みましたが、増補改訂版ということですので、また読んでみました。
 著者は人類学者ですが、最近では法曹の世界にも関わっています。裁判官を10年ごとに審査する機関が最近つくられましたが、そのメンバーの1人でもあります。このところ、裁判官が再任されないケースが増えているのですが、どこの世界にも思想・信条のレベルではなく、ふさわしくない人がいるものです。この分野における著者の積極的な関わりを大いに期待しています。
 なぜか知りませんが、JR久留米駅にもクジャクが飼われています。クジャクの雄が見事な羽をいっぱい広げている姿をたまに見かけますし、甲高い叫び声を聞くこともあります。ちょっとばかり、ぞっとする叫び声で、耳をふさぎたくなるのですが・・・。
 イギリスの学者がクジャクの行動をずっと観察していて、雌は配偶者を決めるまでに2羽から7羽、平均3羽の雄を訪ね歩く。配偶者として選ばれたのは常に雄のなかでもっとも目玉模様の数の多い雄だった。目玉模様は一羽の雄の尾羽に合計140個以上もある。どうやって目玉模様の一番多い雄を選び出せるのか・・・。
 ところが、日本の伊豆シャボテン公園にいるクジャクたちを10年かけて調べたところ、目玉模様の数は雄の繁殖成功度となんの関係もないことが分かったというのです。なんということでしょうか・・・。
 そして、日本でクジャクのあの「ケオーン」という甲高い鳴き声こそが、繁殖成功度と関連していることが判明しました。「ケオーン」という頻度の高い雄ほど、雄性ホルモンであるテストステロンの濃度も高かったのです。
 それにしても、ダーウィンが雌による配偶者選びを提唱したとき、当時の学者たちが声をそろえて、雌の好みが一定であるなどということは、人間の経験からして、まったく支持できないと反対したのだそうです。ふむふむ、なるほど、ですね。分かる気がします。
 オーストラリアのカエルは、雄の声の周波数を聞き比べ、ゆっくり時間をかけて自分の好みの周波数で鳴く雄を見つけて歩く。一晩のあいだに5、6匹の雄をめぐる。ここにも法則があることが分かりました。
 雌ガエルの体重は一匹ごとに少しずつ違う。でも、自分の体重の70%の雄とペアになっている。鳴き声の周波数は体重によって変わる。体格が小さいほど、高い周波数を出す。雌は、雄の声に耳を傾け、その周波数によって自分の体重の70%の体重の雄を見つけて選び出す。というのも、雌は雄を背中に乗せ、一粒ずつ卵を産み、それに雄が一粒ずつ精子をかけていく。だから、自分が背負える重さで、かつ、自分の卵に最大限受精してくれる雄を選ぶようにしているというわけだ。うむむ、すごーい。
 オオヨシキリという小鳥がいます。一夫多妻です。このオオヨシキリでは、雌は歌のレパートリーの豊富な雄を好み、そんな雄は多くの雌と繁殖し、生まれる子の数も多いということです。音痴の私は、オオヨシキリにうまれなくて良かったと思いました。
 ところで、鳥類の95%は一夫一妻です。しかし、学者が例のDNA鑑定で調べてみたところ、つがい以外の相手との交尾そして、つがいでない父の子がうまれるのは70%の確率ということが判明した。つまり、鳥の世界では「不倫」はあたりまえなのだ。これって人間と同じということですよね。でも、著者は、動物の行動のなかに人間の価値や道徳を見ようとしてはいけないと主張しています。うーむ、そうかもしれないけど・・・。
 この本によると、雄と雌との関係は、配偶相手の獲得をめぐる同性間の競争と配偶相手の選り好みと、雄と雌の葛藤と対立、という三つの軸で考えなければいけないとされています。ふむふむ、そうなのか、と思いました。
 選り好みという行動があるため、全員がハッピーになることは滅多にない。
 本当にそうなんですよね。だからヨン様に多くの女性があこがれるのですね、うん。

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