弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年11月 4日

ロースクールの挑戦

著者:大宮フロンティア・ロースクール?期生、出版社:幻冬舎
 2005年度の法科大学院適性試験の志願者は2万人弱でした。2004年度は2万4000人でしたから、17%減です。そして、法学部出身者の割合は前年61%から66%へと増えています。
 大宮法科大学院は第二東京弁護士会が全面的にバックアップしてつくったロースクールですが、社会人の比率が75%と高いことで、全国的にみても異色の存在です。入学者の平均年齢は昼29.4歳、夜35.8歳となっています。
 ?期生は、97人のうち、理科系が34人。その内訳は医師11人、特許庁や中央官庁をふくむ公務員が13人、マスコミ5人、弁理士3人でした。ここでは、入るための学科試験は行わず、書面審査と最終面接のみです。
 この本は、その?期生のうち12人のインタビューにもとづくものです。カリスマ塾講師までいるのには驚いてしまいました。彼は自分の仕事に誇りをもてなくなったようです。
 塾生が合格する最大の要因は、よい学習環境を与えることのできる親のもとに生まれたこと。日本社会でいま階級の二極分化が進行している。高学歴で高収入を得ている親は、子どものためにつかえる軍資金が豊富である。
 結局、彼は、自分がやっているのは特殊部隊養成所だな、そうつぶやいて、弁護士への転身を考えたというわけです。うーん、そうなのかー・・・。
 短大助教授をやっていた女性が弁護士になろうと思って本屋で憲法の本を読んだところたちまち憲法に魅了されたという話に心が魅かれました。
 それまで憲法を読んだことはなかった。初めて読んで、無機質なものと思っていたのが、すごく熱いものに感じられた。国家権力が立法や法の適用によって、国民の基本的人権を侵害しようとするときに、国家権力に「待った」をかけるのが憲法であることを知って感激した。憲法は、他の法律と違って、国民に義務を課すものではなく、国家権力に遵守すべき義務を課すものである。そうなんですよね。だから、小泉政府が憲法改正を言い出すのはおかしいのです。そもそも、権力の横暴を止めるために憲法が生まれたのですから。
 異なる社会環境に生きてきた優秀な人材が、いま弁護士をめざして法科大学院に集まり、切磋琢磨しています。こんな若者たちがいるのなら日本の将来は決して暗いものではない。そんな確信も抱かせてくれる本です。

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