弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年11月 4日

「レクサス」

著者:チェスター・ドーソン、出版社:東洋経済新報社
 アメリカで売れていた最高級車レクサスを今年からトヨタは日本でも売りはじめた。なぜか・・・。
 レクサスはこれまでに世界中で200万台が売れた。レクサスが100万台売れるまでに10年以上かかった。しかし、200万台に達するまでには、それからわずか4年しかかからなかった。今後3年半で300万台に達する見込みだ。
 レクサスはアメリカでは売れているが、ヨーロッパではそれほどでもない。アメリカ人が快適さと信頼性を好むのに対して、ヨーロッパの人は車の操縦性・性能・伝統を重視するから。発展途上国でもレクサスは苦戦している。
 では、アメリカでレクサスはなぜ好調なのか・・・。アメリカでは金持ちはますます金持ちになりつつある。2001年、アメリカで年に10万ドル以上を稼ぐ世帯は人口の 13.8%を占めた。10年前の10%から増えている。
 レクサスのターゲットは、まさに、そのリッチ層なのである。レクサスの顧客の平均年収は25万ドル。ディーラーは、レクサスを1台売ると6000ドルの収入となる。
 高級車仕様の車をつくるため、トヨタのチームはロサンゼルス郊外の高級住宅地も訪問した。アメリカの大金持ちが尊ぶ美的感覚をつかみたかったのだ。アメリカでボボブと呼ばれているニューリッチ層をターゲットとした。
 日本でレクサスをトヨタが売りはじめたということは、日本もアメリカと同じように、金持ちと貧乏人との格差がますます増大していっていること、金持ち層はますます金持ちになっていることを意味します。
 しかし、それは同時に、アメリカを見たらよく分かるように(最近のロシアも同じようですが)、犯罪の多発、テロ攻撃など、社会不安もますます強くなることを意味します。本当に怖いことです。
 車の内装や音など、エンジンのほかにもさまざまに気をつかった。工場は自動化を重視しすぎないようにし、最後は人間が仕上げる。
 レクサスが日本車だと思われないような広告・宣伝も工夫した。その結果、レクサスの購入者の年齢中央値は52歳である。
 高級車の利幅は非常に大きく、一般的なコンパクト・セダンの2倍以上はある。トヨタの利益の70%はアメリカ市場からのもので、その4分の1がレクサスによる。それほどに高級車はもうかる。
 アメリカにベンツ・BMWなどの高級車と決してひけをとらない車としてレクサスをすごく苦労しながら売り出していく過程は感動的です。それでも、レクサスが売れる現象を決して手放しで礼賛するわけにはいきません。

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