弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月27日

談合業務課

著者:鬼島紘一、出版社:光文社
 大林組の課長だった人が、自分の体験にもとづいて談合の実際を実名をあげて告発した本です。汐留・丸の内・六本木ヒルズなどの都心の一等地を大林組が相次いで落としていった内幕が赤裸々に暴露されています。大手ゼネコンがからむ建築はすべてゼネコン同士の談合によるものだということがよく分かり、寒々とした思いにかられてしまいます。
 もちろん、談合は犯罪です。だからゼネコンとは会社ぐるみ違法集団だということにもなります。ゼネコンが昔からヤクザと親密な関係にあるのも当然なんですね。なんとかならないものでしょうか・・・。
 「業務」(談合のことです)担当者から入札金額が指示されますが、その際のメモも現物が紹介されています。入札1回目の金額と2回目のそれとが具体的に書かれたものです。動かしがたい迫真のメモです。
 もちろん、大林組だけが談合をやっているわけではありません。どのゼネコンも同じです。ただ、社員数1万3000人の大林組に途中入社して12年間在職していたというだけに、その体験にもとづく談合の告発はなるほどと思わせます。
 大林組の本社ビルには、100人ほどの天下りOBのいる部屋がある。建設省や運輸省、道路公団などから天下ってきたOBの巣窟になっている。OBたちは、それぞれの出身母体から仕入れた情報を切り売りする。それは、お隣の机にすわる人にも軽々しくは口外できないほどの価値がある。
 談合という不正な方法で落札した企業が利益を得たとき、それは国民に余計な税金負担を強いたことを意味する。談合がなければ、予定価額の1.5倍から2倍で売れた可能性があるのに、低い価額で売却されていった。
 談合がないときには、ゼネコン同士が叩きあいで採算割れとなってしまう。
 この本は談合に政治家は介入していないとしています。本当でしょうか・・・。その一方、政治家への上納金は、工事受注額の3%が定価だともされています。私は、やはり談合には政治家と暴力団の双方が介入していると確信しています。
 予定価額を直接に聞き出せないとき、入札保証金の額を銀行関係者などから聞き出し、それによって予定価格を推定するという方法もとられています。この入札保証金の額についても、絶対に外部にもらさないものになっているはずです。ところが、大林組は、この入札保証金の額を、なぜか事前につかむことができたのです。
 おおっぴらに談合ができなくなった今日、業務担当者は他社の業務担当者と会社名を暗記しなくてはいけない。しかし、すべては裏で決まっていく。ゼネコンは事件にならないようにするため、積算書に会社特有の項目をたてたり、当初の数値を少しばかり変化されたりするなどの対策をとっている。
 毎日毎日、この「業務」に従事している人はどんな気持ちなのかなあ、と不思議に思いました。良心のとがめはもうなくしてしまったのでしょうか・・・。だから、この本をいまも大林組に残って勤めている人が読んで、どう思うのか、関心があるところです。

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