弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月17日

俺たちのマグロ

著者:斎藤健次、出版社:小学館
 マグロ漁船で7年間コック長をしていた体験談を語った「まぐろ土佐船」(小学館文庫)を読んでいましたので、今度も期待して読みました。いま、著者は千葉の習志野台でマグロ料理を中心とした居酒屋を営んでいます。東京からちょっと遠いのが難点ですが、ぜひ一度は行ってみたいと思っています。
 マグロは世界で202万トンとれ、日本が31万トンとり、ほかに36万トンを輸入している。つまり、世界のマグロの3分の1を日本は消費している。
 養殖マグロ。見た目には立派な魚体だ。その頭に包丁を入れると、まるで豆腐を崩すように包丁が入っていく。天然のマグロだったら、それこそ鋸でさえはね返すほどの堅さがあるのに・・・。これが本当にマグロと言えるのか。
 日本に名高い青森県大間(おおま)のホンマグロ。残念ながら、私は一度もお目にかかったことも、食べたこともありません。2000年の初セリで200キロのマグロ1本になんと2020万円という超高値がついて大騒動になりました。普通でも1本200万円から300万円します。このときは1キロ10万円もの値段がついたのです。シーズン中に、100隻あまりの漁船が出て、1日でたった4本のマグロしかとれないこともあたりまえの世界のようです。いったい、どんな味がしてるのでしょうね・・・。
 津軽海峡はエサが豊富で、そのエサを追う漁群もある。太平洋からきたマグロと、日本海から上ってきたマグロがぶつかる。脂の乗ったサンマ、イワシ、イカなどをたっぷり食べ尽くし、北の冷たい海が身を締める。それが大間のマグロだ。
 300キロ近いマグロになると、牛肉と同じで、数日間寝かせていたほうが深い味になるとのことです。
 やせたマグロとか色の出ないマグロを安く買って、赤身をよくたたき、食用の植物性油脂を混ぜる。よく練りあわせると、大トロでも中トロでも思いのままに仕上がる。これがスーパーや回転寿司で見かけるピンク色のネギトロ。ホンマグロ入りのネギトロというのは、本当は20%以上、ホンマグロが入っていないとダメなのに、実際にはホンマグロのネギトロとして売られている。
 台湾のマグロ船にスカウトされた日本人のベテラン船員の給与条件は次のようなもの。月給40万円。水揚2億円以上のときには、月4万円の手当がつくうえ、水揚げ高の
1.2%の歩合もつく。1航海14ヶ月で4億円の水揚げなら、トータルで1000万円。税金がないので、全額が自分の所得になる。
 いま冷凍マグロは、荷をまるごと売買する一船買取引きに変わり、築地市場に水揚げすることはない。商社が毎日、相場を身ながらマグロをセリにかける。これは1976年に卸売市場法改正でセリを通さない相対取引が認められたから。大手の商社はマイナス60度の巨大な冷凍庫をもち、莫大な資金力で、マグロ船一隻分すべて買い上げる。大手スーパーなどの量販店は、市場を通さず、直接に商社へ注文して、大量に買い付ける。これで商店街から魚屋が消えていく。築地の仲卸も代々受けつがれてきたノレンをおろして閉店するところが出始めた。
 日本のマグロ・ブームの内情と問題点をかなりつっこんで知ることができます。私はこの本を午前中に読みましたので、昼食は寿司屋に入ってネギトロ丼を食べました。ああ、大間のホンマグロのトロをぜひ一度食べてみたい・・・。

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