弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月 7日

非武装地帯

著者:イ・キュヒョン、出版社:PHP研究所
 1979年、韓国の朴正熈大統領がKCIA部長に暗殺されました。以後、49日間にわたって大統領が不在という非常事態のなか、北朝鮮軍の精鋭部隊が非武装地帯に侵入してきます。それを韓国軍の捜索隊が阻止して、戦闘状態に入ります。
 当時、実際に部隊の一員として非武装地帯の警備にあたっていたという体験にもとづく小説だけに、圧倒的な迫力があります。
 北朝鮮軍が南侵のために掘りすすめていた地下トンネルが、これまでに4本発見されています。地下50メートルから160メートルの深さで、長さは2キロから3キロもあります。幅は2メートル、高さ2メートルほどです。北朝鮮は一貫して南のデマ宣伝だとしてきましたが、北朝鮮がつくったものであることは間違いないようです。この本では、北朝鮮による地下のトンネル掘進工事を発見するのを任務とする韓国軍の部隊がいたことを明らかにしています。
 この本や、「JSA」「シュリ」「シルミド」「ブラザーフッド」などの韓国映画を見ると、韓国と北朝鮮が朝鮮戦争後も、何度も本格的戦闘行為の寸前までいったことがよく分かります。それほど緊張度の高い社会だったわけです。
 それにしても、徴兵制度のある韓国に生まれなくて幸いでした。軍隊の理不尽かつ野蛮な鉄拳制裁には、「軟弱な」私なんか、とても耐えられません。しかし、そんな道理の通らない軍隊生活のなかでも要領よく泳いでいく人間がいるのですね。やはり暴力だけでは上に立てないようです。コネとお金と運をフルに駆使して上にはい上がっていくわけです。そうみると、案外、いまの「平和な」日本社会だって本質的にはそう変わらないのかもしれません。勝ち組、負け組などという嫌味な言葉が平然とまかり通る世の中なのですから。あー、やだやだ・・・。

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