弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年10月 5日

パンツの面目、ふんどしの沽券

著者:米原万里、出版社:筑摩書房
 いやあ、まいりました。知らないことだらけでした。よくぞ、ここまで調べあげたものです。つい、降参、降参と叫んでしまいました。著者はロシア語通訳の第一人者です。
 ソ連の小学校では、裁縫の授業で女の子がまっ先に教わるのは下着のパンツの作り方。第二次大戦が終了するまで、ソ連では下着のパンツがまったく工業生産されていなかった。
 戦後のドイツ・ベルリンに駐屯したソ連軍人の妻たちは、ネグリジェやシュミーズ姿で、あるいはレースのパンツとブラジャーだけで町を歩いていた。綺麗なレースの縁取りのついたシルクのパンツやブラジャーが、まさか下着だろうとは夢にも思わず、よそ行きの装いのつもりで町を歩いていたのだった・・・。この話は、私も前に聞いたような気がします。てっきり、いつもの西側による反共宣伝かと思っていたら、そうではなかったのです。うーん、そうなのかー・・・。えーっ、それにしても、まさか・・・と驚いてしまいます。
 笑うときに口元を隠す習慣は日本人にしかない。えっー、そうなんだ・・・。
 イエス・キリストが十字架にはりつけられたとき、パンツを着用していた可能性は高い。
 アダムとイブは、いちじくの葉を一枚だけ前隠しにしていたのではない。腰紐で葉をはさんでつるしていた・・・。なるほど、なるほど、そういうことかー・・・。
 現在の世界では、商品化された使い捨てのナプキンを使える女性の方が圧倒的な少数派。それがないのは北朝鮮に限らない。うむ、うむ、きっとそうなんだよねー・・・。
 ズボン形式の衣服の誕生は、今から3万年前の石器時代にさかのぼる。人が乗馬を覚えた6千万年前よりもはるかに前のこと。つまり、馬に乗るためにズボンが考案されたのではなく、ズボンを着用していたから、馬を乗りこなせるようになったということ。
 ところが、ヨーロッパでは、男はズボン、女はスカートという固定観念が強い。15世紀、フランスの英雄ジャンヌ・ダルクが火あぶりの刑に処せられたとき、その罪状のひとつが、男用のズボンを着用したことだった。
 実は、この本に書かれていることが、あまりにも衝撃的であり、かつ、トイレでの行動様式など具体的で、尾籠な話に徹しているので、紹介するのをいくつも遠慮してしまいました。どんな話なのか、この分野に興味と関心をお持ちの方には一読をおすすめします。
 ところで、著者は私よりいくつも若いのに、「あとがき」によると悪性の卵巣癌があり、手術したものの再発したとのことです。著者のエッセーは、いつも大変小気味よく鋭い切れ味なので、感心しながら読んできました。どうぞ、身体に気をつけて、引き続き、あまり無理されることなくがんばってほしいと心から願っています。

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