弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年9月22日

アウシュヴィッツ博物館案内

著者:中谷 剛、出版社:凱風社
 日本人青年がアウシュヴィッツ博物館で唯一の外国人公式ガイド(嘱託)として働いているというのです。私も、アウシュヴィッツ強制収容所跡地にはぜひ一度は行ってみたい、現地に行って人類史上最悪の愚行の現場に立って、人間とは何者なのかということを改めて考えてみたいと思っています。
 ところが、この本によると日本人の青年はあまり行っていないのですね。韓国からは年に2万人あまり行っているというのに、日本からは年に6700人ほどで、しかも年輩者が中心だというのです。もっと日本人の若者にも出かけてもらわないといけません。
 海外旅行大好き人間の多い日本なのですが、楽しいところではないので敬遠するのでしょう。残念なことです。といっても、現地はかなり交通の便がよくないようです。それでも著者は、この町に一家をかまえて14年になるというのですから、たいしたものです。
 博物館案内というわけですから、アウシュヴィッツの隅々まで図解と写真で説明されていますので、強制収容所当時のことが、かなり想像できます。でも、体験記を読まないと本当の苦しみや辛さは伝わってきません。ただ、その体験者も既にすっかり高齢者となっています。きちんと若者に語り継いでいく責務が、大人の私たちにはあります。
 ガス室で殺された人の半分は女性。収容所登録者の3割が女性。最大のとき、一時期4万5000人の女性が強制労働に従事させられていました。収容所の隣りに大きな戦時工場(I・G・ファルベン)などがあり、そこで働かされていたのです。
 なんともいいようのない辛い現実ですが、人類の歴史の真実から目をそむけるわけにはいきません。

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