弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年9月14日

古代日本・文字の来た道

著者:平川 南、出版社:大修館書店
 文字と漢字とは違うという、考えてみれば当たり前の違いを気づかされました。
 漢字は、中国のもっとも主要な民族である漢民族が話す言語を漢語といい、その漢語を表記するための文字なのである。
 漢字の直接の祖先は甲骨文字です。この甲骨文字は戦争とか農産物の出来具合を占うためのものだということは私も知っていました。しかし、単に占いのためだけなら、文字は不要です。占いの内容があたったかどうか、その結果を刻みこんだものが甲骨文字なのです。そして、この甲骨文字は今ではほとんど解読されています。
 甲骨文字は、むしろ占いの正しさを立証し、保存しておくためのものだったのです。一般の国民に読ませる文字ではありませんでした。文字の読者は神様であったのです。
 同じように、当時の青銅器(たとえば、紀元前1000年頃の殷・周時代)には、容器の内側に文字が記されています。したがって、文字の読者は生きた人間ではなく、神様とか祖先の霊魂だったのです。
 秦の始皇帝のころから、文字が不特定多数の人間に向けたものとして使われるようになりました。日本で文字をつかい始めたのは、2〜3世紀ころのことで、百済から日本列島に渡来してきた人たちの影響によると考えられています。文法として朝鮮語と日本語はまったく同じということです。しかし、高句麗と百済は扶与族で、母音で終わる言語をつかい、新羅は韓族で発音が子音で終わるという違いがあります。現代の韓国語は新羅語につながっています。
 日本の仮名のもとである万葉仮名は朝鮮半島の漢字の表音的な用法をまねして成立していきました。ところが、日本の読み方が、オからケに変わるという変化もあって、韓国語と違っていったのです。
 日本で本格的に漢字をつかい出したのは5世紀のこと。しかし、6世紀は空白の世紀を言われています。文献資料に乏しいのです。7世紀になると、大量の木簡もあって漢字が普及していることが分かります。
 また、木簡の材質が日本と韓国とではまったく異なるそうです。日本はヒノキが大半で、スギもいくらかありますが、韓国ではほとんどマツ。ちなみに、仏像の材質も日本はクスノキ、韓国はアカマツです。
 ところで、塩を波の花、すり鉢をあたり鉢と言いかえて、縁起をかつぐという話が紹介されています。私は知りませんでした。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー