弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年9月 7日

勝つ工場

著者:後藤康裕、日本経済新聞社
 日本の企業は中国に引き続き続々と進出しています。2004年の対中投資額は55億ドルで、過去最高でした。世界からの対中投資額も600億円を超えました。ところが、このところ、中国で「安く」モノをつくって日本で売るというより、「中国でつくり、中国で売る」というスタイルが中心になりつつあります。日本企業が日本でモノをつくるのを復活させはじめたのです。そのひとつがキャノン。
 キャノンは大分にデジタルカメラ製造工場をもっています。デジタルカメラの生産コストに占める人件費の比率は1%以下。人件費の安さはコスト競争力の決定的な要因とはならないことが背景にあります。
 そして、キャノンは国内生産の25%を自動化、無人化するが、これは決して人減らしが目的ではない。安定雇用こそ「勝つ工場」の要因だとみているのです。
 日本の製造業は、いま海外展開をさらに進めながら、同時に国内事業を拡大・強化する二正面作戦をとり始めている。生産よりも研究・開発を国内で優先させる戦略にもとづいている。
 九週間一本勝負の原則が、日本だけでなく、今や世界市場に共通している。発売から9週間が勝負。発売した機種が一週間ごとに価格をおとしていくスピードがかつてなく速くなっている。
 企業は開発した技術の特許出願をしない。その代わりに、公正証書をつくって、公証役場に預託しておく。後に特許権者が現れても、先発明を証明して、無償で使用できるようにしておくのだ。特許出願しておくと、海外の企業から模倣されてしまう心配がある。ヨーロッパの企業の特許出願が少ないのは、このような事情があるためで、開発力が弱いからではない。「勝つ工場」の条件は細部に宿る。
 うーん、日本企業が生き残っていく条件は厳しいのですが、やはり努力すれば道は開けていくものなんだ・・・。この本から多くのものを学ばされました。日本人も、まだまだ捨てたものではありません。
 最後に、この本とは関係ありませんが、小泉首相のように靖国神社の公式参拝を強行し、過去の日本の侵略戦争を美化するようでは、中国・韓国をはじめとする東南アジア諸国から日本は信頼されず、経済的にも行き詰まってしまうと思います。
 日本の経済発展は憲法9条を中核とする平和憲法にも裏付けられていることを日本人はもっと自覚すべきだとつくづく思います。

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