弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年8月25日

ペルセポリス

著者:マルジャン・サトラビ、出版社:バジリコ
 イランの少女マルジのお話です。アルプスの少女ハイジのようなファンタジーではありません。イランの現代に生きる多感な少女がどう生きてきたのか、マンガで描かれています。なるほど、そうなのかと思いながら、日頃はマンガをほとんど読まない私です(もちろん、大学生のころはマンガ週刊誌を愛読していましたし、手塚治虫のファンでもありますが、基本的にマンガは卒業しました)が、頁をめくるのがもどかしいくらいに没入して読みふけりました。
 オビに、子どもの頃、革命がありました・・・、戦争がありました・・・、人がたくさん死にました・・・とあります。たしかにそうです。イラン・イラク戦争があり、イスラム革命があり、何十万人もの人々が戦死し、また権力に反抗したとして処刑されていったのです。
 少女マルジは14歳まで高級技術者の家庭に育ち、親元にいました。その後、ヨーロッパに脱出しました。そこでは、過酷なイランでの体験がそのまま受けいれられない状況に置かれ、悩みます。アナーキズムやマルクス主義にも影響を受けますが、失恋の苦しみは自殺願望にもかりたてるのです。なかなか厳しい人生のひとコマが続きます。
 1969年生まれの少女が、さまざまな苦しみを経て大人の女性になっていく過程が黒いタッチの絵で描かれていますので、身近な話として想像できるのです。
 12ヶ国でベストセラーになったということですが、日本でもたくさんの人に読んでほしいと私は思いました。そんな感動を与える、いい本です。

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