弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年8月 8日

海外企業進出の智恵と工夫

著者:田中四郎、出版社:経済産業調査会
 日本輸出入銀行に30年間いて、世界銀行に出向したり、トロントやリオデジャネイロに駐在して、いまは日本国際協力機構にいる調査マンが海外へ進出した企業が成功するポイントを分かりやすくコンパクトにまとめた本です。
 私は、マルドメという言葉が気になりました。ドメスティックという単語を丸で囲んだものです。国内業務専門、外国語は大の苦手、海外のことはまったく分からない、海外ビジネスに無関係の人間だということを意味します。一つの会社内で、国際派と国内派の二つの派閥ができ、2つのグループの間で人間関係が円滑にいかない状況がよく生まれる。しかし、このような溝は埋める必要がある。国際派と呼ばれる人ほど国内業務の核心を理解していなければならないし、国内業務に従事している人こそ海外の動きに絶えず目を光らせ、国際感覚を磨いている必要がある。
 なるほど、なるほど、よく分かります。そうなんですよね・・・。
 日本企業が海外に進出すると、出先の企業は必然的に法的には日本企業ではなくなる。出先の企業は現地法人であって、日本法人ではない。当然のことながら現地の国の法律にしたがうことになる。日本の親会社は現地法人の株主にすぎない。日本から派遣されている現地法人の幹部は、自分は日本企業を経営しているのではなく、駐在国の企業を経営しているのだということを、片時も忘れてはいけない。
 この点も、実際には頭で理解していても、身体がついていかないところなのでしょうね。
 世界経済フォーラムは、日本企業は、世界第17位という悪いビジネス環境のなかで、世界第7位という良い企業活動をしているという評価を与えています。
 日本のビジネス環境は世界的にみて相当に低い。日本は世界で一番ビジネス経費が高い。日本を100とすると、アメリカは66.3、ドイツ66.0、イギリス64.0となる。日本は、安全で能率的な場所ではあるけれども、賃金水準が高いうえに、サービスコストも高い。そして経費も高い国のひとつである。
 うーん、そうかなー・・・。なんだか、しっくりこないところもありますが、ひとつの視点ではあると思いました。

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