弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年8月 5日

遙かなるノモンハン

著者:星 亮一、出版社:光人社
 1939年(昭和14年)5月に起きたノモンハン事件については、いくつかの本を読みましたが、この本は、ノモンハン事件の舞台となったところに著者が出向いて、そこが今どんな様子なのかを写真で紹介しているところに目新しさがあります。
 ノモンハン事件で、日本軍(関東軍の精鋭)はまさに惨敗した。ソ連軍の新式戦車などの物量に圧倒され、肉弾突撃をくり返すばかりだったのだから敗れるのも必然だった。しかし、日本軍は、ここからほとんど何も学ばなかった。責任者を形ばかり更迭しただけ。最前線から生命からがら脱出してきた将兵を、なぜ玉砕しなかったのかと叱ったあげくに冷遇し、ソ連軍の捕虜となって送還された将校にはピストルを与えて自決させた。しかし、小松原司令官や辻参謀たちはのうのうと生きのびた。なんとむごいことでしょうか・・・。
 ソ連軍のジューコフ将軍はスターリンに次のように報告した。日本兵は強かった。下士官はよく訓練され、頑強に戦った。しかし、古参の士官と高級将校は訓練が不十分で、積極性が無く、紋切り型の行動だった。関東軍の作戦参謀も同じことを指摘している。前線指揮官は第一級で、下士官や兵も戦闘に習熟して優秀だった。しかし、中・小隊長に弱点をかかえるものが多く、大隊長はもっとも手薄だった。
 今でも、精神訓話だけが好きな日本人って、多いですよね。科学的というか合理的な裏づけもなくても部下に無理強いする上司がみちみちているように思います。とくに昨今の国会方面は、そんな人間ばかりという気がします・・・。

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