弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年7月21日

談合しました

著者:加藤正夫、出版社:彩図社
 談合で入札者を決めるのを調整と呼ばれ、ふつうは密室で行われる。調整というと聞こえがいいが、実際にはそれぞれ勝手な理由を言いあっているだけであり、最終的にはほとんど力関係で決まる。業者の規模や役人とのつながり、実績によって発言力が大きく変わってくる。
 契約担当の公務員には2種類いる。一つは、賄賂はとらないし談合に協力もしないが、とりたてて不正を暴こうとはせず、「談合するなら勝手にやってくれ、ただし、うちの入札で間違いだけは起こさないでくれ」という態度をとる。
 もう一つは、よこすものは遠慮なく受けとり、なにかと業者の都合を聞き入れてくれる。しかし、自らすすんで賄賂を求める役人はごく少ない。
 談合なしで入札があると、毎年のように請負業者が切り替わるので、心配事が増える。談合で既存になった業者とは長いつきあいになるので、あうんの呼吸で仕事ができる。役人にしてみれば、たとえ経費が高くなったとしても、自分の仕事が楽になればいいのだ。
 役人の協力あるいは黙認がなければ談合は成り立たないし、鶴の一声の存在こそ、談合事件の肝である。談合とは一件一件が孤立した犯罪ではない。グループによって連綿と行われる性質をもった犯罪である。
 既存権というものがある。談合によって落札を約束されている権利のこと。この既存権は貸し出されることもある。
 私もオンブズマン運動にかかわって、談合を裁判で追及したことがあります。しかし、刑事事件になっていないときに談合の成立を裁判所で立証することは不可能に等しいのが現実です。裁判官が認めようとしないからです。
 日本経団連は高級官僚が大企業へ天下りするのが談合の原因のひとつだと認めて、天下りを受けいれないと高らかに宣言しました。ところが、その宣言はわずか数日で取り消されてしまいました。鶴の一声を求める企業の黒い体質は、それほど根深いものがあります。
 この本は談合することを仕事のひとつとしていた担当者が匿名ながら、自分の体験を赤裸々に暴いたものです。日本での談合が横行しており、まさに日常茶飯事であること、その根絶はやる気になればそう難しいことではないことが明らかにされています。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー