弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年7月13日

いつか一緒にパリに行こう

著者:辻 仁成、出版社:光文社
 著者は今パリに住んでいます。奥さんはパリで出産しました。
 フランスの出産は、麻酔をつかう無痛分娩だ。背中の硬膜外腔に直接針を刺し、ずっと麻酔の管を刺したままにしている。えーっ、少し怖いみたい・・・。
 フランスは今、空前の出産ブーム。高齢出産も多い。働く女性の産休制体は充実している。初産なら産前6週間、産後10週間。双子なら36週間の産休が認められていて、ほかに子どもがいたら、その数によって産休は倍々になっていく。夫にも、出産時3日間、生後4ヶ月以内に最大で連続11日間の産休が認められている。すごーい・・・。
 労働時間は週35時間。週休2日で1日7時間。残業なんて、とんでもない(といっても、超エリートは日本人と同じでモーレツに働いているそうです)。一生は一度しかなく、限りなく短い。精一杯楽しまなければ損というもの。なかなか、割り切れません・・・。
 パリは成熟した大人の街。自由というのは、まず他人を気にしないこと。自分の人生を謳歌すること。パリの人々は他人を気にしない。だから、ゴシップというのもはびこらない。うーん、そうですね・・・。ミッテラン大統領が愛人のことを記者から追及されて、それがどうした、と反問して沙汰やみになった話は有名です。
 バゲットは、表面が薄焼き煎餅のようにカリッとしているくせに、中がしっとりと柔らかく、もちもちしているものがいい。この相反する歯ごたえに、美味しさの秘密がある。さらに適度の塩加減と甘みが加わると、最高だ。
 そうなんです。私も10年前にカルチェラタンのプチホテルに泊まり、毎朝バゲットとカフェオレの朝食を楽しみました。表面がカリッとした固さで中味はほんわり柔らかく、絶妙の塩味がきいて、少しだけ甘みを感じさせるバゲットでした。
 プチホテルから歩いて10分も足らずのところにノートルダムの大聖堂があります。着いた日の夕方は、その近くのいかにも観光客向けのレストランでエスカルゴを食べました。おのぼりさんはおのぼりさんらしくと言いながら・・・。
 著者はフランスに住みはじめて1年たち、まだフランス語には悪戦苦闘中のようです。でも、言葉をもてば旅が変わると言っています。私もそのとおりだと思います。
 幸いなことに、私は日常会話レベルの簡単なフランス語ならなんとか会話することができます。プチホテルも私が日本からFAXで予約しましたし、レストラン(ビストロ)の予約も電話ですませました。
 かくいう私のフランス語歴は、なんと30年以上なのです。大学で第二外国語としてフランス語を選択して以来です。大学に入れることになったとき、私は迷わずフランス語を選びました。美味しいフランス料理がメニューを読めて食べられるようになること、フランス美人と親密な関係になること。この2つが理由でした。前者は達成しましたが、後者は残念ながら、可能性の手がかりすらありません。ですから、著者がビーズの挨拶したことを自慢げに書いているのがうらやましくてなりません。えっ、ビーズって何か、ですか。そう、頬と頬とをくっつけたり、左右の頬に口をつけて交互にチュッチュッとする挨拶のことです。フランス映画にはいつも出てきます。
 弁護士になって以来、NHKのラジオ講座を聴いています。頭がバカにならないようにと思って始めました。フランス語って、いつか分かるようになるのかなと、我ながら半信半疑でした。はじめのうちは、頭の上をスズメのさえずりが通り過ぎていくという感じでした。でも、今は違います。車のなかでフランス語のニュース(CNNみたいなものです)を聞いて、なんとか単語レベルでとらえられるようにまではなりました。仏検にも、10年来挑戦しています。準一級にも合格することができました。目下、一級にチャレンジしています。そのため、合格したあとも準一級は受け続けています。毎今年もペーパーテストは合格最低点の73点で(120点満点)でギリギリ合格しました。あとは口頭試問ですが、まったく自信がありません。毎週土曜日には、福岡の日仏学館でフランス人の先生による上級会話クラスに参加しています。いつも思うように話せず、劣等生の悲哀を味わっています。でもでも、いつか一緒にパリに行こうです。どうですか、皆さんも、ご一緒に・・・。

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