弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年7月12日

パレスチナから報告します

著者:アシラ・ハス、出版社:筑摩書房
 パレスチナに住む生粋のユダヤ人女性ジャーナリストのレポートを本にまとめたものです。情景描写が生々しく、いかにも不条理な暴力がパレスチナでは日常的となっている様子が報じられていて、胸をうちます。
 イスラエルの兵役制度は、男子が18歳から29歳までに3年間、女子は18歳から 26歳まで21ヶ月の兵役義務がある。ただし、ユダヤ教徒は義務であっても、キリスト教徒とイスラム教徒は志願制。
 多勢のパレスチナ人の若者が自爆攻撃を実行したが、さらに何十人もの若者が実行者になる順番を待っている。だから自爆テロを終わらせたいなら、なぜ、多くのパレスチナ人がそれを支持するかという問いをたてねばならない。人々の支持がなければ、パレスチナ人の組織はあえて自爆攻撃者を送り出し、予想されるイスラエル側の規模拡大につながる応対を招くようなことはしないはずだ。
 つまり、できる限り迅速に、より大きな武力をつかって、より多く殺して苦しめることが、相手に教訓を与え、相手の計画を未然に防ぐことになるという概念は完全に間違っている。
 うーん、そうなんですよね。私も本当にそう思います。
 日本はパレスチナの大きな援助国。しかし、パレスチナ当局に対する援助金は、結果的にイスラエルの占領を補助している。たとえば、イスラエルが破壊したパレスチナの道路や建物を修復するために援助資金が使われる。日本の援助はパレスチナ社会の発展につかわれるのではなく、イスラエルの占領が引き起こしている損害の補填につかわれている。
 ユダヤ人が軍事的な優位だけが自分たちの将来を保障することができると信じ続けていたら、ユダヤ人社会の将来にとっても、とても危険なことだ。
 ユダヤ人であることを強く自覚しているジャーナリストの言葉だけに、すごい重味のある言葉だと思いました。

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