弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年6月30日

北京原人物語

著者:ノエル・T・ボアズ、青土社
 北京原人の発掘された頭骨は第二次大戦中、日本軍が北京を占領していたときに行方不明となり、今も謎のままです。
 この本によると、北京協和医学院に保管されていた頭骨等を当時の院長がたいした価値はないと考えてぐずぐずしているうちにアメリカ海兵隊の手に渡り、そこでいいかげんに扱われ、そのうち中国人に竜骨という精力剤として粉々になっていったのだろうということです。真相は分かりませんが、残念なことです。たしかなことは、日本軍が北京を占領することがなかったら、行方不明になることもなかったということです。
 この本が面白いのは、その所在を探る前半部分よりも、北京原人とは何だったのか、どういう生活をしていたのかを検証している後半部分です。発掘風景の写真がたくさんあり、それをコンピューターで三次元復元しています。発掘当初はダイナマイト発破をかけたり乱暴な作業だったようですが、途中からは精密な発掘作業だったことが写真をみて、よく分かりました。
 北京原人は、洞窟にすみついていたハイエナから火をつかって獲物の肉を脅して横取りしていたとしています。北京原人は開けた場所に木の枝を組みあわせた小屋で生活していたというのです。それは洞窟のなかで常時、火をつかって人間が生活していた残存物がないことが根拠になっています。
 北京原人の頭骨が分厚いところから、男同士が争うような状況で生活していたのではないかという推測もなされています。それほど平和な生活環境ではなかったというのです。獲物をめぐってか、女性をめぐってか、激しい争いがあり、頭部を保護するために頭骨が厚くなっているのです。うーん、そういうことなのかなー・・・。ちょっと意外でした。
 北京原人は言葉を話せず、それほど手先が器用でもなかった。しかし、両面加工した石器をつくっていたし、火を使いこなしていた。なにより、氷河時代を何十万年も生き抜いてきた。そして、現生人類へ進化するうちに絶滅していった。
 著者は、このような仮説をたてています。

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