弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年6月29日

ゴリラ

著者:山極寿一、出版社:東京大学出版会
 ゴリラには、ほかの動物にはない特徴がある。それは、ゴリラのなかに人類の由来と未来を見ることができるということ。挨拶するとき、人間は手のひらをあわせるが、ゴリラは手の甲で触れあう。
 ゴリラはストレスに大変弱い。ゴリラの孤児を収容して育てる施設がある。しかし、人間と違って、ゴリラは孤児にすらなれない。ゴリラの赤ん坊は、生まれて1年間は母親から手厚い保護を受け、その後はシルバーバックや年上の子どもたちの密接なつきあいを通して成長する。母親や世話をしてくれるシルバーバックから引き離されると、たとえ乳離れしていても、急速に衰弱して死んでしまうことが多い。
 ゴリラの保護は地元の理解なしにはありえない。ゴリラの密猟は、自然公園と公園に雇用された仲間に対する恨みからなされることがある。
 また、カメルーンでは、年間500頭以上のゴリラはブッシュミートとして、牛肉より1.6倍も高価な肉資源である。しかし、ゴリラは4年に1度しか出産せず、成熟するのに十数年かかる。だから、回復不能な打撃を受けることになる。
 今のところ、ゴリラはアフリカ大陸全体で11万頭ほど生育しているとみられている。しかし、いつ絶滅しないとも限らない。ゴリラの天敵は、ヒョウ。ヒョウを恐れる習性がゴリラの行動に影響し、メスはオスを保護者として頼ることになる。
 ゴリラ学者って大変だなとつくづく思ったのは、ゴリラの糞をじっくり調べるというのが基本となるということです。もちろん、臭いもあるのです。でも、ゴリラは菜食主義者ですから、それほど臭くはないのでしょう。といっても、大変やっかいな作業にはちがいありません。
 私は、ゴリラやチンパンジーの本はたくさん読みました。人間とは何かを知るうえで、ゴリラやチンパンジーなどとの違いを認識することは欠かせないことです。でも、知れば知るほど、人間との違いが分からなくなるというのも現実です。ゴリラの生態を紹介する写真がたくさんありますので、それを眺めるだけでも楽しい本です。

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