弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年6月15日

「メディア裏支配」

著者:田中良紹、出版社:講談社
 TBS(東京放送)のディレクターとして長年テレビ番組をつくる側にいた人が、日本のメディアを信用してはいけないと声を大にして叫んでいる本です。日本のメディアがいかに当局に操作されているか、この本を読むと改めて背筋が凍る思いです。
 わかりやすい報道には嘘がある。世の中に起こることは単純であるはずがない。国民が日本のメディアと向きあうときに大切なのは、「正しい報道」という呪縛から解き放たれること。この世に「正しい報道」などありえない。
 テレビの視聴率主義は人間から思考力を奪っている。どこを見ても分かりやすい話ばかりだと人間は考えなくなる。いつの時代にも国策推進に協力するのが日本のメディア。国民はメディアの言うことを信じるのをやめて、自分の頭で考えて判断しなければいけない。小泉首相には驚くほど金と人脈がない。しかし、メディアの力がそれを補っている。小泉首相のパフォーマンスは、中曽根や細川とはまったく質が異なる。殿様が町に降りてきて町人姿に変身し、横丁のあんちゃんとしてふるまっている。メディア、とりわけテレビメディアの効用を計算し尽くしている。
 視聴率を上げるノウハウは、女性に受け入れられるよう、複雑なものはダメ、なるべく白黒がはっきりした話がよい。上品なものもダメ。お高く止まっているものはもっとも嫌われる。
 視聴率は、番組の質とはおよそ関係がない。テレビは操作する。たとえば、「街の声」と称して街頭インタビューを放映するとき、はじめと最後の人物をいれかえるだけで、まったく逆の印象を与えることが可能。
 司法記者クラブほど、徹底した情報管理の下に置かれ、それに抗することのできない無力な記者クラブは他にない。えーっ、そこまでひどいのかしらん・・・。私もずっと司法記者クラブとはつきあってきたのですが・・・。
 私は、テレビは、動物を主人公とするドキュメンタリー以外はほとんど見ません(あとでビデオで見ます)。歌番組もバラエティーショーもクイズ番組も、私にとっては時間のムダでしかありません。どうして、世の中の大勢の人々があんなつまらないものを見て自分の時間を浪費するのか、不思議でなりません。
 そんなことを言うので、いつも私は奇人変人あつかいされています。でも、世の中を変えるのは奇人変人、そして凡人なのですよね・・・。私はそう思って、こうやって毎夜、書評をしこしこと書きつづっています。

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