弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年6月 6日

平家物語図典

著者:五味文彦、出版社:小学館
 平家物語、つまり源平合戦の様子やその当時の人々の生活が絵巻物によって解説されていて、大変わかりやすい本になっています。
 日本の弓は、本来は木製だった。日本の馬は、今の体高160センチをこえるサラブレッドより15センチ以上も低かった。でも、それはアジアの草原馬からみて平均的なもので、日本の馬だけが低かったのではない。ということは、蒙古の馬もサラブレッドほどの体高はなかったということでしょうか・・・。大鎧などの武具を着装した騎兵は体重をふくめて100キロを超えるので、それを乗せる馬は気性が荒くなければ、とてももたなかった。明治以前の日本には去勢の技術はありませんでした。
 壇ノ浦合戦で最終的に源氏に敗れた平家は安徳天皇以下、三種の神器とともに入水した、というのは知っていました。しかし、それをしたのが平清盛の妻時子であり、それが平家の宿敵、後白河法皇へ一矢を報いるための時子の強い意志にもとづくものであるという解説を読んで、なるほど、そうだったのかと思わず膝をうってしまいました。
 平氏も源氏も、その一族のなかは決して一枚岩ではなかったということも語られています。それぞれの一門内で激しい抗争があっていたのです。
 庶民の生活も少し紹介されています。料理は必ずしも女性の仕事ではなく、魚肉を切り分けたり盛りつけをするのは男の仕事でした。まな板で鯉を切り分けている夫の手もとを眺めながら、頬づえをついて、あれこれ注文をつけている妻の姿が絵に描かれています。日本の女性は平安時代の昔からたくましかったことがよく分かります。
 カラー写真を眺めているだけでも楽しい図解・平家物語です。

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