弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年5月27日

倒産の淵から蘇った会社達

著者:村松謙一、出版社:新日本出版社
 倒産寸前の会社を再生させることに情熱を燃やして取り組んできた東京のベテラン弁護士の体験をまとめた本です。個人の破産・再生を専門としている私にも大変勉強になりました。
 人間にとって大切なことは、生命・自由・財産の順番であり、家・屋敷などの財産は三番目に大事なものにすぎない。そうなんです。ところが、一番目に大切な生命を投げ出して財産を守ろうとする人のなんと多いことでしょう。銀行が他の支払いは止めても生命保険の掛け金(月40万円)だけは社長に支払いを続けさせていたという話が紹介されています。とんでもないことです。この4月から、保険契約をして2年以上たたないと自殺のケースでは保険金がおりないことに変わったと聞きました。その前は1年でした。2年になったり、1年になったり、時々、生保会社の都合で変動しています。
 著者は連帯保証制度を見直すべきだと提案していますが、まったく同感です。つい先日も、日掛け金融が、借り手の主婦と相互に連帯保証させあって自己破産申立しにくくしているケースを扱いました。安易に連帯保証人になるのは考えものですが、法制度としても考え直すべきだと私も思います。
 また、返済期間をあまり考えすぎない方がよいという指摘には、なるほど、これは良い考えだと感心しました。まず返済期間ありきという概念を捨てたら、もっと世の中は楽しく活気が出てくるというのです。借入金が40億円。年に1000万円を返済している。返済に400年かかる。でも、利息の年9000万円はきちんと支払っている。社員に給料を支払い、給与も若干アップさせた。会社は幸せに経営していけるし、社員も生き生きと働いている。400年かかる約束でも、みんながそれでいいのなら、いいじゃないか。著者の指摘に、なるほど、そのとおりだと膝をうってしまいました。
 会社を再生するには、特定の取引先に大きく依存しすぎないこと。この指摘は弁護士の業務にも言えることです。会社再生とは、つきつめたら人間救済なのである。うーん、なるほど、そうだよなー・・・。ついつい、うなずきました。
 免除益など、企業の税金のことなどは理解できませんでしたが、会社経営に無理をしている人には手にとって読んでほしい本です。
 ところで、この本の題名って、漢字が難しすぎませんか。出版社のセンスを疑ってしまいました。もっと、分かりやすい題名にしてほしいものです。

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