弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年5月12日

フード・ポリティクス

著者:マリオン・ネスル、出版社:新曜社
 食品会社はタバコ 会社と同じである。いつだって国民の健康よりも株主のニーズを優先させる。テレビの視聴時間は、太りすぎを予測する最良の指標のひとつである。太りすぎの率は1970年代公判から1990年代前半にかけて倍増し、6歳から11歳までの子どもで8%が14%に、12歳以上の子どもは6%が12%となった。同じく、太りすぎの大人は25%だったのが35%になった。
 アメリカ人の食事の半分近くが家の外であり、その4分の1はファーストフードである。
 食品の広告の70%はファーストフードである。塩は加工食品の業界にとって必要不可欠。塩は水を結合させ、非常に低コストで食品の重さを増し、加工食品の味を良くし、のどを乾かす。塩は、「もっと食べよう」を促進する。
 牛乳は、人間の赤ちゃんが消化吸収するには濃すぎる栄養分を含んでいる。粉ミルクは母乳の特性のほとんどをもっているが、すべてではない。もっとも重要な違いは、赤ちゃんが病原体から身を守るための免疫物質が欠けていることである。母乳だけでなく粉ミルクを与えたときの方がエイズの感染率は高い。母親がエイズに感染していない場合、粉ミルクで育てられた子どもは、母乳で育てられた子どもに比べて下痢で死亡する率が6倍にのぼる。
 子どもたちに、高コレステロール、高血圧の子が増え、「成人型」糖尿病の発生率がどんどん低年齢化している。肥満児の率が、白人23%、メキシコ系29%、黒人31%となっている。子どもが標的となり、テレビコマーシャルは学校現場にまで入りこんでいる。学校にソフトドリンクを押しつけるドリンク販売権まである。会社は学校にお金を支払うかわりに、その学区内のすべての学校で自社のソフトドリンクを販売できるのである。ソフトドリンクとは、カロリーが高くて、栄養価が低い食品だ。
 アメリカの食生活がいかに貧しいか、そして子どもたちが狙われていることがよく分かる本です。それにしても465頁という大部な本を読みとおすのには骨が折れました。

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