弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年5月 6日

ツバメのくらし百科

著者:大田眞也、出版社:弦書房
 今年も3月下旬からツバメの飛ぶのを見かけるようになりました。北海道では5月以降にならないと飛んでいないそうです。ツバメは、9月末には南方へ飛び去っていきます。日本のツバメはインドネシアやフィリピンからやって来るのです。繁殖が目的です。
 まず雄がやってきて雌を迎えます。雄はしきりに鳴いてプロポーズしますが、その決定権は雌にあります。そのポイントは尾羽の長さです。というのは、寄生虫(ダニ)がいたり病原体に感染していると、尾羽の成長が悪くなるので、尾羽が長いのは健康の証明だからです。ふーん、なるほどねー・・・。
 ツバメは、毎年だいたい同じ巣に戻ります。その子どもも近くに巣をつくります。そして、雄と雌の両方が生きていたら、ずっと同じ巣に戻ってきます。同じパートナーが5年も続いたという観察例があるそうです。しかし、雌はつがいの雄の目を盗んで浮気をすることがあります。そのとき、独身の雄より経験豊富で実績のある既婚の雄を受け入れる傾向が強いといいます。人間も同じでしょうか・・・。いや違うかな。女性は、やっぱり若いツバメを好むのかもしれませんね。
 ところで、次のような観察例が報告されています。まず雌がやって来た。雄は新顔だった。ところが、産卵寸前になって、昨年のパートナーがひょっこり姿を現した。さあ、大変。三角関係。雄同士でとっくみあいの激しい争いが始まった。雌は、そのときどうしたか。高見の見物を決めこんだか・・・。いえ、そうではなく、遅れて帰ってきた雄を激しく排撃したのは、実は雌の方だった。雌は、限られた繁殖期間を目前にして、生死不明で、再び巡りあえるかどうか分からない、かつてのパートナーを待つ余裕はない。いったん、新たに番いを形成したからには、一度諦めたかつての番いの相手と巡り会えても、もはや無縁の異性と見なして割り切らなければいけない。そうでなければ種族維持もできなくなる・・・。このような解説がなされています。うーん、人間社会だったら、どうなんでしょうね・・・。ツバメに学ばされました。
 ツバメの巣は、できるだけ人目につきやすいところにつくられます。それは人間によって、天敵から守ってもらおうという魂胆からのことです。巣の場所を最終的に決めるのも雌の方です。ヒナが生まれて、親ツバメがエサをやるときには、もっとも大きく開いたヒナの口にエサをつっこみます。もっとも大きく口を開けるのは、もっとも腹を空かしたヒナなのです。ヒナたちは、巣内での位置を絶えず入れ替わっていて、もっとも空腹のヒナが正面のもっとも良い場所に陣どる。この仕組みによって、ヒナたちは平等にエサを受けとり、一様に成長していく。ひゃあー、そうだったのかー・・。
 ヒナが巣立つ日は、親ツバメの態度が一変し、ヒナには巣の外からエサを見せびらかすだけで絶対に与えない。そこで、空腹に耐えかねたヒナが意を決して巣から飛びたって親元に向かう。親ツバメはヒナを安全なところまで誘導すると、そこではじめてエサを与えるというのです。親心なんですね・・・。
 ツバメの渡りのときのスピードは時速90キロくらいらしいのです。大変なスピードですよね。それにしても、はるばるインドネシアまで行くのに何日間かかるのでしょうか。
 ツバメのことがよく分かる本です。わが家にはツバメの巣はありませんが、スズメがいます。今度はスズメについて、その生態を紹介した本を読んでみたいと思っています。どなたか、いい本があったらぜひご紹介ください。

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