弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年5月 6日

忠誠の代償

著者:ロン・サスキンド、出版社:日本経済新聞社
 オニール前財務長官が語るブッシュ政権の正体とオビにあります。また、大統領を震撼させた衝撃の内幕本とも銘うっています。なるほど、ブッシュ政権の寒々しい内幕がよく分かります。
 ブッシュ大統領は団塊世代。マイケル・ムーア監督の映画「華氏911」を見た人は覚えているでしょう。9.11事件を知らされたときのボー然とした表情のブッシュの顔は、ノータリン男の間抜け面の典型でした。よくもこんな男でアメリカの大統領がつとまるものだと思ったことでした。嘘だと思ったら、ぜひ一度あの場面を見てください。まるで何も考えていないことがよく分かる表情をしています。
 オニール財務長官はブッシュ大統領と定期的に1対1で話すことのできる地位にありました。そのオニール長官がそのときのことをこう語っているのです。
 ブッシュは何も質問しなかった。表情を変えずにオニールを見つめ、肯定的なものも、否定的なものも、反応らしきものはまったく示さなかった。ブッシュは重要な資料を読むことはしないし、周囲から期待されてもいない。ブッシュは、しばしば私は直観でやると高言する。
 だから、ブッシュ政権には前途なんてない。もともと政策を評価し、効果的に検討して一貫した統制をとる組織なんて存在しないも同然だ。いや、ブッシュの側近で実権を握っている者はごく少数ながらいる。ローブ、ヒューズ、カードそしてライス。
 ブッシュは重要な権限を他人に委ねている。政権内部の大多数がそれを見抜いている。ブッシュは十分に考え抜かれたとはいえないような極度に観念論な意見に踊らされている。ブッシュが出席する重要な会議、たとえば、閣議や国家安全保障会議には綿密な台本が用意されている。大統領が報告書を読むなんて思ってはいけない。ホワイトハウス内のスタッフはこう言っているそうです。ブッシュは、耳が聞こえない人間ばかりの部屋にいる目が見えない人間のようなもの。お互いに何の疎通も見られない。このように表現されています。呆れてモノも言えません。
 オニールとパウエルとクリスティの3人は、ブッシュの隠れみのとして利用されただけ。 背筋がゾクゾク寒気を覚える本です。身近にいた人間がここまでブッシュの正体を暴いていいものかと心配になったほどです。そんなブッシュ大統領が2期目、再選されたなんて、今でも信じられない思いです。
 ところで、この本にはこんなエピソードが紹介されています。
 ブッシュ大統領の参加する内輪だけのパーティーのとき、子どものころお母さんにねだった好きな料理は何でしたか、そう質問されたブッシュは次のように答えました。
 とんでもない。母は一度も料理したことなんてありません。あの人は指に霜焼けをこしらえていましたよ。いつも冷凍庫から取り出すだけでしたから・・・。
 なんだか寒々とした情景ですね。ブッシュは父親もアメリカ大統領だったわけですが、親の愛情に恵まれず、不幸な家庭で育ったようですね。可哀想といえば、かわいそうです。

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