弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月21日

アメリカは正気を取り戻せるか

著者:ロバート・B・ライシュ、出版社:東洋経済新報社
 著者はクリントン政権時代に労働長官をつとめていました。私と同じ団塊の世代です。
 ネオコンという言葉は最近ようやく日本人にも定着していますが、この本ではラドコンという言葉が登場しています。耳慣れないのですが、過激保守派ということです(ラジカル・コンサーバティブ)。ラドコンは強い信念をもっている。それが強さになっている。自分たちは悪との戦いにおける善の力を代表していると確信している。
 ラドコンに同意しない人々は政治に幻滅し、意気阻喪しており、反撃しても仕方がないと思っている。公共の場ではリベラルの思想や理想が語られなくなっている。
 ラドコン版の繁栄は、金持ちに報い、中産階級にはほとんど何も与えず、貧困者は不利な状況に追いやる。トップ経営者が巨額の報酬をさらに増額させている一方で、中間レベルの経営者や時給で働く労働者は仕事を失ったり、定年のための貯えを年金給付もカットされている。
 トップ経営者の所得は1980年に平均的労働者の賃金の42倍だったが、1990年にはそれが85倍となり、今は280倍にもなっている。それも会社の業績自体は悪化しているのに・・・。昔は限度というものがあったが、今はない。
 アメリカの高額所得者の所得税率は、第一次大戦中は77%、第二次大戦中は90%。それが、1980年に70%だったのが、レーガンが28%にまで大幅に下げてしまった。健康保険の民営化は金持ちにとっては良いアイデアだが、そうでなければ悲惨な目にあう可能性がある。
 ラドコンのすすめる武力行使は無責任だ。その結果、テロ行為を増やしてしまうからだ。
 アメリカは、イランのシャー、コンゴのモブツ、ニカラグアのソモサ、ギリシャや韓国の将軍、チリのピノチェト、フィリピンのマルコス、アフガニスタンのムジャヒディンを援助してきた。アドバイスを与え、暗殺団や拷問の専門家を訓練し、設備を提供し、さらに独裁者が蓄えた巨大な富を隠すのに手伝ってきた。ラドコンは世界から危険を取り除くどころか、一段と世界を危険なものとしている。
 リベラル派が勝利するのには、熱意つまり情熱が必要だ。リベラル派は今こそたたかいを開始しなければならない。多くの真面目な有権者が政治に幻滅を感じて棄権している。そんな有権者は、腐敗したシステムを変えるのには上品なだけではダメだということを知っている。やはり、真の改革者であるという熱情をもって訴えなければいけないのだ。しかも、それを楽しくやらなければならない。希望とユーモアの気持ちをもって政治を実践しなければならない。
 この最後の訴えかけに私もそうだ、そうだと心が震えました。今は状況に負けて、愚痴をこぼしているときではないのです。9条改悪なんて許さないぞ。さあ、明日から、もうひとがんばり楽しくたたかおう。この本に勇気をもらって、ますます元気になりました。

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